※編集部注:【2024年9月6日更新】
特別高圧は、電力会社が供給する電力の一つで、主に契約電力の大きな大規模施設で使われます。特別高圧受電設備や電気主任技術者の配置などが必要となり、維持管理費用は比較的大きくなりますが、基本料金や電力量料金は高圧より安く設定される傾向にあります。
この記事では、特別高圧と高圧・低圧との違い、電力供給の仕組みや特別高圧電気料金メニューなどについて解説します。
特別高圧電力(特高)とは
特別高圧電力(特高)とは、電圧が直流・交流で7,000Vを超えるものと定義され、一般的に供給電圧が交流2万Vや6万Vなどのことを指します。契約電力においては2,000kW以上を設定されることが多くなり、特別高圧電力を必要とする施設は、年間電気代が数億円〜数百億円規模の工場や商業施設、オフィスビルなどです。
契約電力や供給電圧、主な対象者といった基本的な項目について、高圧と特別高圧の違いを次の表にまとめました。
一口に特別高圧といっても、契約電力のレンジごとに供給電圧が異なることがおわかりいただけるでしょう。また求められる運用者も、2万Vでは高圧と同じ第三種電気主任技術者であるのに対して、6万Vと14万Vでは第二種電気主任技術者となります。V数が大きくなるほど、事故や災害防止、労働安全確保のための規制が厳しくなるのです。電気主任技術者の選任・配置については、事業用電気工作物の設置者(所有者)に対し「電気事業法」で義務付けられています。
特別高圧を利用する場合は、送電線を直接工場や施設に引き込み、変電所から電気を送ることになります。電線を引き込むにも鉄塔などの付帯設備が不可欠です。
特別高圧では、毎月の基本料金を左右する契約電力を小売電気事業者と個別に協議して設定する「協議制」がとられています。
特高・高圧・低圧との違い
電力会社が供給する電力は、電圧によって「特別高圧(特高)」「高圧」「低圧」に分けられます。
先述のとおり特別高圧は「受電電圧が2万V以上、契約電力が2,000kW以上の大規模施設」を対象にしています。高圧は「50~2,000kW未満の施設」、低圧は「50kW未満で一般家庭や商店」が対象となります。
ここでは、特別高圧・高圧・低圧の違いについて具体的にご説明します。
高圧電力とは
高圧電力とは、電圧が直流で750V超~7,000V以下、交流で600V超~7,000V以下のものと定義され、一般的に供給電圧にして交流6,000Vのことを指します。高圧電力を必要とする施設は、50〜2,000kW未満の電気を利用する中小規模の工場や施設、病院、学校などの施設です。
6,000V以上の高圧で受電するため、特別高圧と同じように「キュービクル」と呼ばれる高圧受電設備を敷地内に設置する必要があります。キュービクルの設置も、資格を有した専門業者への工事依頼が必須となります。高圧の契約電力は、大口の場合は特別高圧と同じ「協議制」、小口の場合は使用した電力の規模(最大需要電力)に応じて契約電力が決まる「実量制」がとられています。
低圧電力とは
低圧電力は、電圧が直流で750V以下、交流で600V以下と定義され、供給電圧100V、又は200Vのことを指します。50kW未満の一般家庭や飲食店、商店などの小規模な店舗、事務所で利用されています。
更に、電気の供給方式に拠って「電灯」と「動力」に区分されます。
低圧は100Vまたは200Vの電圧で、電圧を変更することなくそのまま使えるため、特別な受変電設備の設置が必要はありません。ただし、電力料金単価は高圧や特別高圧と比較すると割高に設定されています。
電力供給の仕組み
発電所で発電された電力が需要家に届くまでの配電系統の中で、特別高圧の施設はより上流に位置する変電所から受電します。高圧や低圧の施設は、それより下流に位置する変電所から受電します。
そのため、特別高圧の受電設備で事故が発生した場合、その影響範囲は下流に位置する施設にまで広がる恐れがあります。特別高圧施設では、電気主任技術者や電力会社と十分に協議するなど、安全な運用体制が求められるのです。こうした事情をより理解するために、特別高圧を含めた電力供給の仕組みをみてみましょう。
発電所で発電された電力は、変電によって徐々に電圧を下げながら、各需要家に届けられます。発電所から送電所に送り出された時点では数十万Vに上る電圧も、特別高圧施設(大工場やコンビナートなど)へ供給する一次変電所や中間変電所では、数万~15万4000Vまで減圧されます。その後、さらなる変電によって減圧された電力が、中小規模の工場やオフィスビル、一般家庭といったより小規模な需要家に届けられるのです。
出典:電気事業連合会HP
特別高圧受変電設備の基礎知識
電力会社から送電される電力は、住宅用や小規模なビルを除き、多くが特別高圧や高圧に設定されています。
特別高圧や高圧の電気は危険性が高く、そのままでは使用できない為、変圧器を用いて200Vや100Vに変圧するシステムを設置しなければなりません。このように高圧の電気を受け入れて、最終的に使用できる電圧に変換するための設備一式を「受変電設備」と言います。
受変電設備には高い安全性が求められます。専門業者による設置を行うのはもちろんのこと、受変電設備を有する施設には保安規定の作成と月次・年次での定期点検が電気事業法によって義務付けられています。
関連記事:高圧電力に欠かせないキュービクルとは? 役割や耐用年数、保守業務などをわかりやすく紹介!
特別高圧の料金メニュー
特別高圧電力の料金はどのような仕組みになっているのでしょうか?東京電力エナジーパートナーによる料金メニューを例にみてみましょう。
東京電力エナジーパートナー株式会社による特別高圧料金メニュー
東京電力エナジーパートナー株式会社では、2024年4月1日より新しい電気料金プランを標準メニューとして提供しています。新たな標準メニューでは、電力量料金に燃料費調整と市場価格調整を適用するかどうかによって、次の3つに分かれています。
- 燃料費調整と市場価格調整の両方を適用する「ベーシックプラン」
- 燃料費調整のみを適用する「市場調整ゼロプラン」
- 市場価格調整のみを適用する「市場価格連動プラン」
また、現行の電気料金プランを引き続き使用する場合は、対象とする施設や電気の使用時間帯などによって、次の4つに分かれています。
- 業務用ビルや商業施設など向け(夜間や日曜・祝日の使用が多い施設):「特別高圧季節別時間帯別電力A」
- 業務用ビルや商業施設など向け(平日の昼間の使用が多い施設):「特別高圧電力A」
- 工場など向け(夜間や日曜・祝日の使用が多い施設):「特別高圧季節別時間帯別電力B」
- 工場など向け(平日の昼間の使用が多い施設):「特別高圧電力B」
いずれのメニューも、基本料金や電力量料金は高圧メニューの水準より安く設定されています。配電系統の上位に位置する特別高圧の施設は、下流の施設よりも送配電のロスが小さく、それだけコストが安いなどの事情があるためです。
関連記事:東京電力エナジーパートナー株式会社の高圧法人向け電気料金プランを解説
特別高圧は2000年から自由化
電力小売りの自由化といえば、低圧(一般家庭や商店など)を含めた2016年の全面自由化が記憶に新しいことでしょう。特別高圧の施設については2000年3月から小売り自由化が始まっています。
対象となる大規模工場やオフィスビル、商業施設などが、東京電力などの旧一般電気事業者だけでなく、新規に電力小売市場に参入した新電力事業者からも電力を購入できるようになったのです。
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