
電気代の値上げが叫ばれる昨今。市場連動型プランという比較的新しいメニューが登場し、これからの普及が期待されています。本記事では、法人向けの市場連動型プランの概要や従来メニューとの違い、普及の背景、メリットやデメリット、よくあるご質問を紹介していきます。
市場連動型プランとは:固定単価メニューとの違い
多くの法人が契約する高圧電力では、直近12カ月の電力使用の最大値に応じた基本料金と使った分だけ増える電力量料金(従量料金)が固定単価で計算され、再エネ賦課金と燃料費調整額が加わるメニューが一般的でした。
今回ご紹介する市場連動型プランは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に連動して価格が決まるメニューになります。料金計算方法や市場価格の反映方法は各社異なりますが、電力量料金が固定単価ではなくなるケースや、電源調達費という項目が追加されるケースがあります。
https://business.enechange.jp/blog/comparing-price-for-different-quotation
JEPXについて補足します。JEPXでは、電力会社間で電力の売買・入札がされ、1日を30分ごとに分割した48コマで取引が行われており、各コマごとに取引価格が変わります。電力会社は電力需要に応じて、自社で仕入れている電源に不足が生じた場合、必要な電力量を入札・調達します。
また市場価格の動き方について、温暖な気候等で電力需要が少ない季節や、晴天で太陽光発電による電力供給量が多くなる日や時間帯は市場価格が安くなり、空調使用などにより電力需要の多い真夏日や真冬日は高くなる傾向があります。
2021年度の市場価格の最安値は0.01円、最高値は80円でした。加えて、市場価格は電力エリアによって異なるため、市場連動型プランの料金計算時には各電力エリアの市場価格が適用されます。
法人向け市場連動型プランの普及理由と今後
電力会社が市場連動型プランを始める理由
今までは家庭も法人も、基本料金と使用した電力量で電気料金が決まるプランが一般的で、単価は固定されていました。
しかし、世界情勢の影響を受けて電源となる石油や石炭、LNGが高騰している昨今、多くの小売電気事業者にとって、発電事業者から電気を仕入れて固定単価で販売する方法では採算が取りづらくなり、需要家へ値上げを迫る(あるいは事業撤退する)ケースが増えました。
参考:最終保障供給約款に契約する法人が気をつけるべきこと
https://business.enechange.jp/blog/cauntions-of-final-guarantee-terms
こうした市況の変化を受けて現れたのが市場連動型プランになります。新電力のうち、家庭向けは株式会社ハルエネ(ハルエネでんき)などが、法人向けは日本テクノ株式会社(市場でんき他)などが提供を始めていました。
旧一般電力事業者にも期待がかかる中で、口火を切ったのは中部電力でした。2022年5月20日、同社グループ会社である中部電力ミライズでは、域内の法人需要家に対して、市場連動型プランの申し込み受付再開を発表しました。
今後、市場連動型プランは一般的になるのか
開始の背景は先述した通りですが、同プランは法人の需要家に受け入れられ、今後はもっと広まっていくのでしょうか?
電力調達価格の急騰により、従来の単価水準では採算を維持できない電力会社が現状増えている状況を鑑みると、あらかじめ料金プランに調達費の変動を見込んだ市場連動型プランの適用が増えていくと、エネチェンジBizでは推察します。
電力価格について、直近2年間を振り返ってみます。2021年度における一日ごとの平均市場価格(全国平均)は、年度前半が10円以下と低位で推移し、大手電力会社の標準プランにおける従量料金単価を下回りました。同年度の後半は国内の火力発電所の操業停止、ロシア・ウクライナ問題を発端とする燃料価格高騰の影響により電力の供給価格が上昇したことから30円以上となるケースも発生。
2022年4月以降は、電力需要の安定化や電力供給力の確保により、20円前後で推移しています。今後の見通しについては原子力発電所の稼働準備が進められており、運転開始がされた場合は、供給力が増加することで市場価格の安定化が見込まれます。
法人向け(高圧)市場連動型プランを提供する電力会社一覧
法人向け(高圧)の市場連動型プランを提供している主な企業をご紹介します(公式サイトやプレスリリースなどで公表せずに提供を開始している企業がいる場合も考えられます)。
- 一部の新電力(日本テクノ株式会社、株式会社U-POWER、株式会社afterFIT ほか)
- 一部地域の大手電力(2023年1月25日更新時点)
事業者名 | 供給開始時期 | 市場連動型プランの受付ページ |
東北電力株式会社 | 2022年7月 | |
東京電力エナジーパートナー株式会社 | 2022年8月 | あり |
中部電力ミライズ株式会社 | 2022年6月 | 専用ページはなし |
北陸電力株式会社 | 2022年8月 | 専用ページはなし(問い合わせ先のみ明記) |
関西電力株式会社 | 2022年9月 | あり |
中国電力株式会社 | 2023年4月 | あり |
九州電力株式会社 | 2022年9月 | 専用ページはなし |
エリアの違いに加えて、企業によっては再エネ電源の利用や省エネに関する副商材とのセット販売などで、差別化を図っています。
市場連動型プランにまつわる、よくあるご質問
電気代の高騰リスクは? 価格メリットを享受できるのはどんな場合?
市場連動型プランでは、電気使用量が多いタイミングで市場価格が低下している場合、一般的な電力プランの従量料金(15〜19円程度)を下回り、電気料金が安くなります。
一方、電力需給のひっ迫等による市場価格の上昇と、電気使用量が増えるタイミングが重なることで、電気料金が大幅に高騰するリスクもあります。
市場価格は一日のうち、太陽光発電による供給量が多い日中の時間帯に下落することが多く、早朝や夜間では供給量が減少し価格が上昇する傾向があります。そのため、日中の稼働量が多い工場やオフィス入居の多いビルなどの契約において、メリットが受けられる可能性が高くなります。
最終保障供給とどちらがお得なの?
最終保障供給約款については「各エリアの大手電力会社標準プラン比1.2倍の単価」から制度が見直され、市場価格が上乗せされるようになりました。
参考:最終保障供給約款に契約する法人が気をつけるべきこと
https://business.enechange.jp/blog/cauntions-of-final-guarantee-terms
加えて最終保障では市場価格が1円等に下落した場合でも、各エリアの大手電力会社標準プランの従量料金単価が下限値として設定されます。例えば、東京電力エリアの場合、月間平均市場価格が1円となった際も、適用価格は16.24円となります。
一方、市場連動型プランだと、市場価格が標準プランの単価以下に下落した場合には、比例して従量料金単価も下落するプランが多いため、主に価格下落傾向にある状況の場合には市場連動型プランのほうが最終保障約款よりもメリットが出る可能性が高くなります。
ただし市場価格が上昇局面の場合、どちらのプランでも従量料金単価は上昇するため注意が必要です。
まとめ
ロシア・ウクライナ問題により燃料価格が高騰したこと、また国内の発電量が減少していることから、電力会社としては従来の価格水準を保ちながら固定価格で供給し続けることは当面難しいと言えます。
一方、市場連動型プランだと電源調達価格を販売価格に折り込めるため、電力会社としては燃料高の環境下でも取り扱いやすく、今後は各社メニューが増えていくと予想されます。
市場連動型プランで契約する場合、電気使用量の大小、使用する時間帯によって適用される単価や最終的な電気料金が大きく異なりますので、現在、契約中のプランの内容、価格水準と比較検討することが重要です。
また先述通り、電力会社の撤退等により最終保障供給約款での電力供給を受けざるを得ない場合、最終保障への市場価格反映が決定しており、電気料金の変動リスクが発生します。今後、市場連動型プランを扱う電力会社が増えてくることが考えられるため、各社プランの特徴をよく比較したうえで契約を検討することが重要です。
参考:最終保障供給(約款)とは?
https://business.enechange.jp/blog/final-guarantee-terms
エネチェンジBizでは、独自の電気料金メニューを提供しています
制度変更を受けて値上げされた最終保障供給より、割安になる市場連動型プランを複数の電力会社と始めました。料金メニューやリスクもご説明できますので、まずはお気軽に一括比較・お見積もりください。