
※編集物注:本記事の内容は現在、電気・ガス取引監視等委員会で見直しが検討されている段階です。変更があれば、内容を更新いたします。
本記事では、最終保障供給(約款)契約を考えている、あるいは契約せざるを得ない企業のご担当社様に向けて、同制度の目的や直近の電力市場を踏まえながら、小売電力事業者(電力会社)との向き合い方をお伝えします。
最終保障供給(約款)の役割とは
最終保障供給約款とは、小売電気事業者が倒産やその他不測の事態により、急に撤退した場合において、お客様(需要家)を保護するため、一般送配電事業者に電力供給の継続を一時的に義務付ける制度です。
ただし「一時的に」と上記したように、同制度はいわば「緊急避難先」として用意されているものです。そのため、この最終保障供給約款に留まることは本来想定されていません。また需要家が留まらないように、旧一般電気事業者の標準料金から1.2倍割り増しする設定がされています。
参考:最終保障供給約款の制度の概要や料金について
https://business.enechange.jp/blog/final-guarantee-terms
最終保障供給を巡る「電力難民」の問題
皆さんは「電力難民」という言葉を聞いたことはありますか? 電力調達の契約を結べなかった法人(あるいは個人)を一般的には指します。
2022年に入り、電力小売事業者と契約が結べず最終保障制度に進む法人の需要家が急増。昨年4月以降は数百件だった件数が、今年5月時点で、13,000件以上を記録しています。
なぜ今、需要家は小売事業者と契約が結べないのかというと、小売事業者側が下記を理由に既存の契約を解除する、または新規契約の受付を停止しているためです。
- 世界的な燃料価格の上昇に伴う、発電コストの高騰
- 市場に供給される電力量低下による、市場価格の高騰
- ウクライナ情勢によるLNG・石油・石炭の供給不安
電力会社からすると、電気を発電事業者や卸取引市場から買って需要家に販売した場合、赤字になってしまいます。そのため、今は電力の提供を断りながら最終保障供給を行う他の大手電力事業者を案内している状況なのです。また、上記の理由を受けて値上げや新規受付停止だけでなく、契約解除や事業撤退で対応する小売事業者もいます。
ここで問題に上がるのは、「他と契約できない」「値上げに納得がいかないから仕方なく」と、最終保障供給をあえて選ぶ需要家が出てきてしまっている点です。これでは「緊急避難先」として、本来の役割が全うできているとは言えません。
最終保障供給にまつわる今後の動き
現状、本来的な目的とは異なる使われ方がされてしまっている最終保障供給には、より一層の注意が求められます。本章では、同制度や電力市場は今後どのようになるのかを説明していきます。
最終保障供給の料金自体が値上がりし、自由料金よりも割高になる
2022年5月初旬の時点では、先述したように電力会社各社の自由料金が最終保障供給よりも割高になる逆転現象が起きています。そこで、最終保障供給の料金を値上げし、あくまで「緊急避難先」として使われるよう正していく動きが考えられます。
経済産業省にある電力・ガス取引監視等委員会では、5月31日、従来の最終保障料金の料金体系をベースに、従量料金分について、卸市場価格と託送料金との差分を補正項として追加することが決まりました。つまり、最終保障供給の料金が市場連動型プランとなることで、最終保障供給が自由料金よりも基本的には割高になります(具体的な開始時期は本記事執筆時点では未定)。
参考:法人向けの市場連動型プランとは?
https://business.enechange.jp/blog/biz-market-linkage-plan-summary
小売事業者各社が市場連動型プランを販売する可能性
5月20日、中部電力ミライズでは市場連動型プランにて域内の申し込み受付再開を発表しました。その他の小売事業者でも、同様の動きが広がる可能性があります。
なぜなら最終保障供給の料金見直しにより、卸市場価格を適宜反映させ、常に自由料金よりも割高になるように是正するからです。
一方で、燃料の調達環境がすぐには改善されないため、固定単価での受付は停止する状況が続くと思われます。
最終保障供給について法人の需要家が気をつけるべきこと
現状、需要家に向けてお伝えできる注意点は下記になります。
- 制度変更の時期
- 想定外の値上げ
- 上記を考慮しない、安易な最終保障供給への申込
自由料金が最終保障供給より高かった状態は是正され、最終保障供給が市場連動型プランに変わる可能性が高くなってきました。特に夏・冬の需要が増える時期は、卸取引市場も高騰するリスクがあり、最終保障供給を契約中の方、申し込みを検討されている方は一層の注意が必要です。
エネチェンジBizでは、独自の電気料金メニューを提供しています
今後の制度変更を受けて値上げが予想される最終保障供給より、割安になる市場連動型プランを複数の電力会社と始めました。料金メニューやリスクもご説明できますので、まずはお気軽に一括比較・お見積もりください。