
※編集物注:本記事の内容は現在、電気・ガス取引監視等委員会で見直しが検討されている段階です。変更があれば、内容を更新いたします。
本記事では、最終保障供給(約款)契約を考えている、あるいは契約せざるを得ない企業のご担当者様に向けて、同制度の目的や直近の電力市場を踏まえながら、小売電気事業者との向き合い方をお伝えします。
最終保障供給(約款)の役割とは
最終保障供給約款とは、小売電気事業者が倒産やその他不測の事態により、急に撤退した場合において、お客様(需要家)を保護するため、一般送配電事業者に電力供給の継続を一時的に義務付ける制度です。
ただし「一時的に」と上記したように、同制度はいわば「緊急避難先」として用意されているものです。そのため、この最終保障供給約款に留まることは本来想定されていません。また需要家が留まらないように、旧一般電気事業者の標準料金から1.2倍割り増しする設定がされています。
参考:最終保障供給約款の制度の概要や料金について
https://business.enechange.jp/blog/final-guarantee-terms
最終保障供給を巡る「電力難民」の問題
皆さんは「電力難民」という言葉を聞いたことはありますか? 電力調達の契約を結べなかった法人(あるいは個人)を一般的には指します。
2022年に入り、小売電気事業者と契約が結べず最終保障制度に進む法人需要家が急増。昨年4月以降は数百件だった件数が、2023年1月時点で、41,000件以上を記録しています。
なぜ今、需要家は小売事業者と契約が結べないのかというと、小売事業者側が下記を理由に既存契約を解除する、または新規契約の受付を停止しているためです。
- 世界的な燃料価格の上昇に伴う、発電コストの高騰
- 市場に供給される電力量低下による、市場価格の高騰
- ウクライナ情勢によるLNG・石油・石炭の供給不安
電力会社からすると、電気を発電事業者や卸取引市場から買って需要家に販売した場合、赤字になってしまいます。そのため、今は電力の提供を断りながら最終保障供給を行う他の大手電力事業者を案内している状況なのです。また、上記の理由を受けて値上げや新規受付停止だけでなく、契約解除や事業撤退で対応する小売事業者もいます。
ここで問題に上がるのは、「他と契約できない」「値上げに納得がいかないから仕方なく」と、最終保障供給をあえて選ぶ需要家が出てきてしまっている点です。これでは「緊急避難先」として、本来の役割が全うできているとは言えません。
最終保障供給にまつわる今後の動き
現状、本来的な目的とは異なる使われ方がされてしまっている最終保障供給には、より一層の注意が求められます。本章では、同制度や電力市場は今後どのようになるのかを説明していきます。
最終保障供給の料金自体が値上がりし、自由料金よりも割高になる
2022年5月初旬の時点では、先述したように電力会社各社の自由料金が最終保障供給よりも割高になる逆転現象が起きています。そこで、最終保障供給の料金を値上げし、あくまで「緊急避難先」として使われるよう正していく動きが考えられます。
経済産業省にある電力・ガス取引監視等委員会では、5月31日、従来の最終保障料金の料金体系をベースに、従量料金分について、卸市場価格と託送料金との差分を補正項として追加することが決まりました。つまり、最終保障供給の料金が市場連動型プランとなることで、最終保障供給が自由料金よりも基本的には割高になります。
参考:法人向けの市場連動型プランとは?
https://business.enechange.jp/blog/biz-market-linkage-plan-summary
最終保障供給の値上げ、制度見直し時期
全国エリアにて、2022年9月1日から最終保障制度の見直しが始まりました。旧一般電力事業者、送配電事業者各社がプレスリリースにて、小売(標準メニュー)や最終保障供給の値上げについて方針を発表しています。
事業者名 |
小売新規受付の再開時期 |
小売の値上水準 |
最終保障値上げ時期、内容 |
北海道電力 |
2022年12月22日に受付再開、2023年4月供給再開予定 |
19%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
東北電力 |
2022年11月に新規需要家への供給再開に向けて動いていたが、同年9月20日で新規受付は停止(現在は市場連動型プランを主に案内) |
16%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
東京電力 |
2023年4月に新規需要家への供給再開に向けて動いていたが、2022年10月27日で新規受付は終了(現在は市場連動型プランを主に案内) |
12%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
中部電力 |
2023年1月頃に新規受付を再開、2023年4月供給再開予定 |
8%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
北陸電力 |
2022年12月15日に受付再開、2023年4月供給再開予定 |
24%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
関西電力 |
2022年12月15日に受付再開、2023年4月供給再開予定 |
0% |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
中国電力 |
2023年4月に新規需要家への供給再開に向けて動いていたが、2023年1月11日で新規受付は終了(現在は市場連動型プランを主に案内) |
17%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
四国電力 |
2022年12月12日に受付再開、2023年4月供給再開予定 |
9%程度 |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
九州電力 |
2023年4月に新規需要家への供給再開に向けて動いていたが、2023年2月14日で新規受付は終了(現在は市場連動型プランを主に案内) |
0% |
2022年9月1日から市場連動料金への変更を発表 |
沖縄電力 |
2023年4月に値上げを実施予定 |
40%程度 |
不明 |
*エネチェンジBiz編集部調べ:各社プレスリリース
各社で違いが出る主な理由は、それぞれの経営状況や発電所の稼働状況・燃料の調達状況によるものと考えられます。
小売事業者各社が市場連動型プランを販売を開始
2022年5月20日、中部電力ミライズでは市場連動型プランにて域内の申し込み受付再開を発表。同年8月以降、東京電力や四国電力、九州電力の小売でも市場連動型プランの提供が始まっています(各社、細かな違いが見受けられます)。
最終保障供給について法人の需要家が気をつけるべきこと
現状、需要家に向けてお伝えできる注意点は下記になります。
- 制度変更の時期(2022年9月1日に決定)
- 想定外の値上げ
- 上記を考慮しない、安易な最終保障供給への申込
自由料金が最終保障供給より高かった状態は是正され、最終保障供給が市場連動型プランに変わる可能性が高くなってきました。特に夏・冬の需要が増える時期は、卸取引市場も高騰するリスクがあり、最終保障供給を契約中の方、申し込みを検討されている方は一層の注意が必要です。
エネチェンジBizでは、独自の電気料金メニューを提供しています
今後の制度変更を受けて値上げが予想される最終保障供給より、割安になる市場連動型プランを複数の電力会社と始めました。料金メニューやリスクもご説明できますので、まずはお気軽に一括比較・お見積もりください。