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「あれはスゴい」と省エネ専門家も評価、電気代削減しつつ生産量3倍の栄光製作所

トリミングver

世界遺産に登録された富岡製糸場から車で10分、群馬県富岡市にある栄光製作所は昭和48年に創立した従業員約48人の中小企業です。医療機器や自動車関連などの電子機器を製造する一方で、2003年からは地域のニーズに応じて介護事業も始めました。

2014年度にはエネルギー管理優良事業者等関東経済産業局長賞を受賞し、その後も省エネ関連の各種の賞を受賞しています。省エネへの原動力は倒産の危機と、2011年に経験した生産機器の入れ替えに伴う契約電力の大幅な増加にあったといいます。

勅使河原覚社長が「戦い」と表現する徹底した省エネ対策をなぜ、達成することができたのか。その理由は「電気の見える化」と「エネルギー管理体制の構築」にあったと言います。

小ロットからの一貫生産体制で電子機器を生産している栄光製作所の工場は、多くの中小企業の工場とかわらない雰囲気を醸し出しています。ただ、そこには手作り感満載の省エネ対策があちこちに施してあります。そして、ムダな明かりを消すことで日中でも暗い工場のなか、省エネ担当の女性社員が「消し忘れないようにお願いします」などと同僚に檄を飛ばしていくのです。

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専門家からも「あそこまでやれない、あれはすごい」と評される取り組みは、「人手があればあっただけ仕事があった時代から急激に仕事がなくなった」時代の変化、そして、経年劣化した製造ラインを入れ替えた際にデマンド(需要電力)が一気に上がり、そのデマンドによって、1年間の電気料金が決まってしまったことがあります。勅使河原社長はこのとき、全社員を集めて「このままでは大変なことになる」ことを伝え、徹底した電源管理に取り組むことを宣言しました。

電気料金は、電力会社が30分ごとの使用電力の平均を計測し、年間を通じて最も多く使用した30分間の電力量を契約電力とします。このため、1年に1回でも使用電力量の多い30分間があれば、そこに合わせて電気料金が決まり、翌年の料金が跳ね上がることもあるのです。

栄光製作所では製造ラインの入れ替えの際、機械を運び入れたメーカーと電気工事の担当者が試運転のスイッチを入れました。機械が一斉に動き始めた途端、デマンドが上がりました。「いままで苦労して下げたのに、一気に最大デマンドが上がり、そのデマンドで向こう1年間の契約料が決まった」のです。

そこから始まった「戦い」でまず決めたのが、「電気の見える化」と「エネルギー管理体制の構築」でした。2つに絞ったのは、「あまりいろいろやってもスタッフが困るだろう」という勅使河原社長の思いがありました。

まずは社員にどうやって電気代が計算されているかを理解してもらうことから始めました。見える化を始めてから1年。月ごとの電力量の見えるグラフが出てみると、今まで何をどうやって節電していいかわからなかったものが、見えてきたといいます。それまでも、使っていない電灯を消したり、機械の電源を入れるタイミングもいろいろ考えたりしてきたそうですが、見える化によって具体的に何をどうすれば効果を発揮するのかがわかったのです。

当時、最大電力量は106kwの月もあれば36kwの月もあったといいます。その差は70kw、ほほ3倍の電力量の差です。この大きな差を目の前にして主要なメンバーで会議を行いました。これが、エネルギー管理体制の構築につながりました。

どうしても顧客の納期を守らないといけない製品について、納期を踏まえてどう機械を動かすか。生産日程と電源管理の打ち合わせが同時に行われ、各工程が何時に電源を入れて何時に電源を切らなければいけないかを調整、確認していきました。

取り組みの結果は全社朝礼で報告しました。当然、朝礼の時間は長くなりましたが、徹底的に報告したといいます。全社員の気持ちを統一するためです。毎日繰り返すうちに、社員たちが率先して改善や工夫を始めました。栄光製作所で「エコ活動」と呼んでいるこれらの取り組みには「扇風機とストーブ」という取り組みがあります。

作業場には真冬でもストーブが1台だけなのですが、「全く寒くない」のだそう。室内の空気循環をスモークテスターによる煙の流れで確認して、冬でも扇風機を回し、角度を変えたり、首を固定したりして暖かい空気がうまく循環するようにしているからだといいます。1階と2階をつなぐ昇降口には引き戸をつけて空気を遮断できるようにしています。

工場に設置されたコンプレッサー(空気圧縮機)は電力消費の大きい機械ですが、生産規模が大きくなるたびに「付けたし、付けたし」された状態でした。このコンプレッサーの配管は各コンプレッサーごとに設置されていたのですが、すべてをループ化することでより少ない電力で運用できるようになったといいます。

取り組みをはじめて4年で、最大電力量の差は70kwから7kwまで激減しました。年間を通してデマンド値が平均的になったのです。では、生産量が減ったかというと違います。最大電力量が少ない月は受注を増やすために積極的に営業したからです。このため、全体の電力使用量は増えても、最大電力量は抑えられるのです。今の最大電力量の差は7kwからさらに減って、4kwにまで下がったといいます。

2010年に106kwだった契約電力は2017年に68kwにまで減りましたが、主要な基板生産枚数は19万枚から59万枚へと3倍以上になっているのです。

勅使河原社長が掲げた「情報の見える化」と「エネルギー管理体制の構築」が奏功した背景には、情報の共有化、社員のアイデア活用もあります。また関東経済産業局長賞の表彰式には行ける社員がみんなで行っており、省エネ意識の向上と社員の一体感が生まれています。

倒産の危機を前に「自身の無力さ」を知り、融資をストップされて「最終的に大切なものは何かと考え、支えてくれるのはスタッフだ」と気づいた勅使河原社長。「必要のない人は一人もいない」「人のよいところを見逃さない」という意識で社員と接しています。

「答えを教えるのではなく、手段と方法を指導する」「継続させるために変化を与える」。そんなことを心がけながら、「根くらべ」の取り組みを続け、実績を積み上げてきました。

「社員に正しく理解してもらうことが、省エネにつながる」。最後に勅使河原社長が強調した言葉には、重みがあります。

栄光製作所によるより詳しい取り組みについては、こちらのインタビュー記事もご覧ください。