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温対法とは? 省エネ法との違いや改正のポイントを徹底解説

地球温暖化対策の推進に関する法律、略して「温対法」は地球温暖化による地球環境への深刻な影響を踏まえ、温室効果ガスの排出量削減と吸収作用の保全・強化を目的とした法律です。

この記事では、温対法とは具体的にどのようなものか、改正ポイントや省エネ法との違いなどについて解説します。

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温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)とは?

温対法とは、地球温暖化対策の推進に関する法律の略称で、地球温暖化による地球環境への深刻な影響を踏まえ、温室効果ガスの排出量削減と吸収作用の保全・強化を目的とした法律です。この法律では、政府、地方公共団体、事業者、国民がそれぞれに役割を担い、温室効果ガスの排出量削減に取り組むことが定められています。
参考:環境省|地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画

温対法の目的と背景

  • 温対法の目的
    温対法では、昨今の異常気象や地球環境の激変を踏まえ、“気候系に対し危険な人為的干渉を及ぼさない水準に大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ、地球温暖化を防止する”ことを目指しています。社会経済活動による温室効果ガスの排出量の削減などを促進するためのさまざまな施策を通じて、地球温暖化対策の推進を目的とする法律です。

    上記を実現するために、温対法では温室効果ガス排出の実情を明らかにすることが求められています。各事業者に対しては、自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国への報告が義務づけられており、国ではその情報をまとめて公表する旨が定められています。
  • 温対法制定の背景
    温対法が制定された1998年当時、地球温暖化問題は国際的に関心が高まっていました。1997年に開催された京都議定書締約国会議において、先進国による温室効果ガスの排出量削減の義務が定められたことを受け、日本でも温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを強化する必要性が緊急的な課題となります。

    更に、国内においても異常気象の頻発や自然環境の激変など、地球温暖化の影響が徐々に顕著になりつつありました。政府は、こうした状況を踏まえて温対法を制定し、温室効果ガスの排出量削減に向けた本格的な取り組みを開始しました。
    参考:環境省|地球温暖化対策推進法の成立・改正の経緯

 

温対法の概要

算定・報告・公表制度の概要

温対法は、政府における基本方針の策定、地方自治体における実行計画の策定といった内容をはじめとし、更に時代の変化や社会的な必要性をもとに改正が重ねられてきました。これまでに、地球温暖化対策本部の設置、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の制定などが示され、2024年の改正では温室効果ガスの排出量の削減を行う事業活動に対する支援強化などが打ち出されています。

2005年に規定された温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度は、温対法に基づき温室効果ガスを多量に排出する事業者(特定排出者)に、自らの温室効果ガスの排出量を算定し国に報告することを義務づけ、国が報告された情報を集計・公表する制度です。
参考:環境省|改正地球温暖化対策推進法の概要

以下では、制度のねらいや対象となる事業者などについて解説します。

制度のねらい

環境省によると温室効果ガスの排出を抑制するには、事業者自らの活動で排出する温室効果ガスの量を算出・把握することを基本としています。これにより、排出抑制策を立案・実施し、その効果を評価しながら新たな対策の策定・実行が可能となる仕組みです。

算定された排出量を国が集計・公表することで事業者は自らの状況を比較し、対策の見直しにつなげられます。また、国民全体の排出抑制への関心を高め、理解を深めることも期待されます。

温対法対象の温室効果ガス

温対法では、すべての温室効果ガスが対象です。

    温室効果ガス       性質      用途、排出源
二酸化炭素(CO2) 代表的な温室効果ガス 化石燃料の燃焼など。
メタン(CH4) 天然ガスの主成分で、常温で気体。よく燃える。 稲作、家畜の腸内発酵、廃棄物の埋め立てなど。
一酸化二窒素(N2O) 数ある窒素酸化物の中で最も安定した物質。他の窒素酸化物(例えば二酸化窒素)などのような害はない。 燃料の燃焼、工業プロセスなど。
HFCS(ハイドロフルオロカーボン類) 塩素がなく、オゾン層を破壊しないフロン。強力な温室効果ガス。 スプレー、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、化学物質の製造プロセスなど。
PFCS(パーフルオロカーボン類) 炭素とフッ素だけからなるフロン。強力な温室効果ガス。

半導体の製造プロセスなど。
SF6(六フッ化硫黄) 硫黄の六フッ化物。強力な温室効果ガス。 電気の絶縁体など。
NF3(三フッ化窒素) 窒素とフッ素からなる無機化合物。強力な温室効果ガス。 半導体の製造プロセスなど。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター

温対法対象企業

温対法対象企業は、エネルギー起源CO2の対象者と非エネルギー起源のCO2対象者に分類されます。エネルギー起源とは、燃料の燃焼によって発生する温室効果ガス、非エネルギー起源は、工業プロセスの化学反応などで発生する温室効果ガスです。

●エネルギー起源CO2の対象者
エネルギー起源のCO2は、主に燃料の燃焼によって発生します。エネルギー起源CO2の排出に関わる対象者は、以下のような事業者です。

  • 発電所
    石炭、石油、天然ガスなどを燃焼させて電力を生産する発電所は、大量のCO2を排出します。
  • 産業セクター
    製鉄所、セメント工場、石油精製所など、多くのエネルギーを使用する工場はエネルギー起源CO2の主要な排出源となります。
  • 運輸セクター
    自動車、トラック、飛行機、船舶などの交通手段は燃料を燃焼させることでCO2を排出します。
  • 商業セクター
    暖房、調理、給湯などの日常的なエネルギー使用も、エネルギー起源CO2の排出を引き起こします。

●非エネルギー起源CO2の対象者
非エネルギー起源のCO2は、燃料の燃焼以外のプロセスで発生します。非エネルギー起源CO2の排出に関わる対象者は、以下のような事業者や業界です。

  • 工業プロセス
    炭素排出量に価格をつける手法です。CO2の排出量に比例した費用負担を求めることで、消費者や生産者といった排出者に対する温室効果ガス削減効果を直接的に高めます。
  • 廃棄物処理業
    課税や補助金制度を通じて炭素排出量に間接的に価格をつける手法です。
  • 農業セクター
    土地利用変化(森林伐採や農地転換)や農業活動(例えば土壌呼吸や家畜の消化過程)からのCO2排出も含まれます。
  • その他の製造業
    鉱業や金属加工業など、エネルギー以外のプロセスでCO2を排出する業種も含まれます。

排出量の算定

排出量算定の流れ

温室効果ガス排出量算定方法は、以下の式を使います。

  • 温室効果ガス排出量=活動量×排出係数
活動量とは、事業者の活動規模に関する量を表し、勘定科目ごとの使用量の合計値です。この数値に、活動量あたりのCO2排出量「排出係数」をかけ合わせて求めます。

排出係数とは

基礎排出係数調整後排出係数について-1

排出係数とは、活動量1単位あたりの温室効果ガス排出量を表す係数です。環境省が定める排出係数は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のガイドラインに基づいて算定されています。排出係数は、物質使用量単位あたりの温室効果ガスの排出量を定めたものです。廃棄物の燃料使用1tあたりのCO2排出量は、tCO2/tと表記されます。

排出係数の表記は、基準単位とメタン、一酸化二窒素といった排出される温室効果ガスの種類によって異なるのが特徴です。一般的なCO2排出係数は、電気事業者の基礎排出係数と調整後排出係数を指します。これらの係数は、電気事業者ごとに設定され、毎年環境大臣・経済産業大臣によって公開されます。

そのため、温室効果ガス排出量算定時には、基礎排出係数と調整後排出係数を用いて使用電力から別々に排出量を算出することが必要です。

排出量の報告

報告するガスの種類、提出する書類

  • 報告対象となるガス
    温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度に基づき、報告対象となるガスは、以下のとおりです。
    ▷二酸化炭素(CO2)
    ▷メタン(CH4)
    ▷亜酸化窒素(N2O)
    ▷フロン類(HFCs、PFCs、SF6)
    ▷三臭素メタン(BCFCs)
    ▷六臭素エタン(CFCs)
  • 報告期限
    ▷特定事業所排出者:毎年度7月末日までに報告
    ▷特定輸送排出者:毎年度6月末日までに報告
  • 算定対象期間
    ▷代替フロン等4ガス(HFC、PFC、SF6、NF3)以外の温室効果ガス:年度ごと
    ▷代替フロン等4ガス:暦年ごと

罰則

報告をしない場合や虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料の罰則があります。
参考:環境省|温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度

 

温対法と省エネ法の違い

温対法と省エネ法

温対法と省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)は、どちらもエネルギー問題に関わる重要な法律ですが、目的、対象、内容などが異なります。

省エネ法とは

省エネ法の正式名称は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」で、エネルギーの効率的な活用とエネルギー使用にともなう環境への負荷の低減、脱炭素社会実現のために制定されました。
関連記事:脱炭素とは? 押さえておきたい基礎知識
関連記事:都内の中小事業所が活用すべき省エネ支援、「地球温暖化対策報告書制度」とは?

目的の違い

温対法が地球温暖化対策の推進を目指すのに対して、省エネ法ではエネルギーの効率的活用を通じて最終的には2050年までに脱炭素社会の実現を目指します。

参考:経済産業省|2023年4月施行の「改正省エネ法」、何が変わった?

対象物質・対象者の違い

  • 対象物質
    ▷温対法:温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロン類等)
    ▷省エネ法:エネルギー(電気、石油、ガス、石炭等)
  • 対象者
    ▷温対法:温室効果ガスを排出する事業者(特定排出者)
    ▷省エネ法:エネルギーを使用する事業者すべて

罰則の違い

▷温対法:未提出・虚偽で20万円以下の罰金
▷省エネ法:未提出・虚偽で50万円以下、省エネ担当者を選任しない場合は100万円以下の罰金、情報漏えい・業務停止命令違反では1年以下の懲役または100万円以下の罰金
参考:経済産業省|省エネ法の概要

 

【2024年最新版】温対法改正のポイント

地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案

温対法改正の意義としては、日本が地球温暖化対策を一層強化し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速するための具体的な施策を打ち出している点にあります。これにより、国際的な気候変動対策の枠組みの中で日本の役割を果たすとともに、国内の産業や社会全体の脱炭素化の推進が期待されています。

温対法改正の背景

2021年に行われた改正には、主に以下の要因が背景にあります。

  • 2050年カーボンニュートラル宣言
    2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを宣言しました。この宣言を受けて温対法を基本理念として位置づけ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強化することが求められています。
  • 地域脱炭素化の促進
    ゼロカーボンシティを目指す自治体が増え、地域における脱炭素化の取り組みが活発化しています。温対法に基づく地方公共団体実行計画制度を拡充し、地域の脱炭素化を支援する枠組みを強化する必要があります。
  • ESG投資の拡大
    環境・社会・ガバナンス(ESG)への投資が拡大し、企業の脱炭素経営が求められています。温対法を通じて、企業の取り組みを促進することが重要となりました。

関連記事:非化石証書について
参考:経済産業省|クレジット取引について
参考:経済産業省|JCM(二国間クレジット制度)
参考:経済産業省|カーボンプライシングの動向について~それぞれの炭素価格

温対法改正の概要

温対法改正によって「パリ協定」の目標や「2050年カーボンニュートラル宣言」が基本理念として明確に位置づけられました。また地球温暖化対策の関係者として国民が明記されたことで、国、自治体、企業といった組織および個人レベルでの意識と行動が重視されています。

更に、温暖化対策が社会全体での取り組みであること、またその方向性が強く打ち出されたことで、国としての断固たる姿勢がわかりやすく浸透し、自治体や企業がより確信をもって各施策を進められると期待されます。

パリ協定と2050年カーボンニュートラル宣言に基づく基本理念の導入

温対法に基本理念として「2050年カーボンニュートラル」が位置づけられたことで脱炭素化に向けた取り組みを法的に明確化し、長期的な視点での政策の推進が図られます。具体的には、温対法の基本理念にしたがって、再生可能エネルギーの導入促進や省エネの推進、二国間クレジット制度(JCM)の推進、排出係数の見直しが行われています。

地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化計画と認定制度の設立

改正により地域における再生可能エネルギーの活用や脱炭素化の取り組みを促進するための地域脱炭素化促進事業制度が創設されました。この制度は、地方公共団体が地域の実情や特性に応じた脱炭素化計画を策定し、その計画に基づいた事業を認定することによる地域の脱炭素化への支援強化を目的とします。

脱炭素経営促進のため、企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進

脱炭素化経営の推進において、企業の排出量情報の透明性と共有は不可欠です。近年、排出量情報のデジタル化・オープンデータ化が積極的に進められています。温室効果ガス排出量の算定・報告・公表については、電子システム化を原則として法令のもと、排出量情報を報告および公表しなければなりません。

 

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企業では、温対法の改正により、温室効果ガス排出削減への取り組みを確実かつ迅速に進めることが課題となっています。温対法に即した企業活動は、社会貢献する企業姿勢を示せる好機です。自社のエネルギー消費の実情をしっかりと把握するとともに、より効果的な対策を実施していかなければなりません。

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