世界では、温暖化抑制のために脱炭素社会への動きを強めています。関連するさまざまな用語が登場するなかで、「今ひとつ理解が追い付いていない」という人もいるのではないでしょうか。
今回は、脱炭素の基礎知識、現在(2024年2月時点)行われている取り組みを紹介します。あわせて地球環境の現状や目標に向けた取り組み状況も解説します。
※編集部注:【2024年2月26日更新】脱炭素とは?
はじめに、脱炭素とは何か脱炭素の定義や関連用語との違いについて解説します。
脱炭素とカーボンニュートラルの違い
脱炭素とは、CO2に代表される温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする取り組みです。基本的には、主にCO2を軸として、地球上の気温上昇に関連する物質の排出量を可能な限り抑えようとする行動を指します。一方、カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、「プラスマイナスゼロ」にしようという考え方です。
温室効果ガスの排出削減に取り組むと同時に、さまざまな技術を使い、CO2などの吸収量を向上させていきます。
脱炭素とGXの違い
GX(GreenTransformation:グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料から温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギーへの移行、変革を行うことです。脱炭素を実現するためには、社会のすべての分野において、エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの導入など、温室効果ガスの排出量を削減する取り組みが必要です。
脱炭素は、GXの目的の1つであり、GXは脱炭素を実現するための手段の1つといえます。
関連記事:GX(グリーントランスフォーメーション)とは? 押さえておきたい基礎知識
脱炭素社会が求められる背景
脱炭素社会が注目される背景と、日本における取り組みを解説します。
地球温暖化の進行
脱炭素社会に目が向けられるもっとも大きな理由は、地球温暖化の深刻化です。地球温暖化とは、温室効果ガスの排出など人類の経済活動によって、地球の平均気温が上昇する現象とされています。近年、気候変動の影響が世界各地で顕在化し、豪雨や猛暑、干ばつなどの異常気象や海面上昇などの被害が拡大傾向です。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、世界の平均気温は少なくとも今世紀半ばまで上昇することが予測されています。そのため、温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、地球温暖化の急激な進行が継続していくといえるでしょう。
参考:JCCCA|地球温暖化の影響予測(世界)
化石燃料の枯渇
資源エネルギー庁によると化石燃料の確認埋蔵量は、これまでも新たな発見や回収率の向上により増加してきたものの、2020年末時点での残量は石油が約53.5年、天然ガスが約48.8年、石炭が約139年分としています。今後も新たな発見や回収率の向上が進む可能性はありますが、いずれは枯渇を迎えると考えられています。
参考:経済産業省|令和4年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2023)PDF版
参考:経済産業省|一次エネルギーの動向
日本での脱炭素化に向けた取り組み
日本では、2021年に「国・地方脱炭素実現会議」が「2030年までの脱炭素ロードマップ」を公表しています。具体的には日本が温室効果ガスの排出を、2030年までに実質ゼロにするための以下のような計画を示しています。
- 地域ごとの再生可能エネルギーの導入目標
- 省エネルギー施策
- 地域特性に合わせた持続可能な交通システムの構築
- 地域産業の脱炭素化
- 住民の参加促進
- 地域経済の活性化 など
地域社会全体の持続可能な発展を図るための施策も提案されました。更に「2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けた取り組み」についても検討を進めています。2050年カーボンニュートラルを目指すゼロカーボンシティをはじめとした地域の取り組みを、再生可能エネルギーの主力電源化などの推進によって支援することが示されました。
以降の章では、この動きについて紹介していきます。
地域脱炭素ロードマップ
先に紹介した「地域脱炭素ロードマップ」について解説します。
地域脱炭素ロードマップとは?
地域脱炭素ロードマップは、各地域が温室効果ガスの排出を削減し、地域全体で脱炭素社会を実現するための具体的な計画や戦略をまとめたものです。特に、2030年までの取り組みを喫緊の課題とし、地方自治体や中央政府、地域の関係者が協力して策定されています。
ロードマップには、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー施策、持続可能な交通システムの整備、産業の脱炭素化など、多岐にわたる取り組みが含まれており、その地域の特性や課題に合わせてカスタマイズされます。
参考:国・地方脱炭素実現会議|地域脱炭素ロードマップ【概要】
参考:環境省|地域脱炭素に向けた取組
地域脱炭素とは?
地域脱炭素とは、特定の地域(都市、町、村など)がそのほか、域内で排出される二酸化炭素(CO2)やほかの温室効果ガスの量を減らす取り組みです。脱炭素への取り組みによって地域課題の解決、地方創生に貢献するととらえられています。また、地域脱炭素は地域内のエネルギー使用や産業活動、交通手段、生活様式など、さまざまな要因に関わることが想定されます。
参考:環境省|脱炭素地域づくり支援サイト
なぜ地域脱炭素の取り組みが必要なのか
国全体が目指す脱炭素社会の実現に向けて、目標の達成のためには、国と地方の協働・共創による取り組みが必要不可欠です。地域脱炭素の取り組みが必要な具体的な理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 地球温暖化や気候変動の影響を緩和し、持続可能な未来を実現するため
- エネルギーセキュリティの向上とエネルギーの自給率の増加を図るため
- 新たな産業や雇用の創出を促進するため
- 環境への負荷を減らし、豊かな自然環境を保護するため
脱炭素先行地域とは?
脱炭素先行地域とは、地域全体での温室効果ガス(主に二酸化炭素など)の排出量を削減し、持続可能な社会を実現するために、ほかの地域よりも先行して取り組みを進めている地域です。同地域では、再生可能エネルギーの活用や省エネルギーの促進、持続可能な交通システムの整備など、さまざまな施策が実施されています。
その結果、地域全体の環境への負荷を軽減し、地球温暖化の進行を抑制する効果が期待されています。なお、2030年度までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域で、脱炭素社会に向けた独自性をもった取り組みが進められる予定です。これらの事例による波及効果として「脱炭素ドミノ」が起こることが期待されています。
これらのことから脱炭素先行地域は、地域脱炭素化の実現に向けてリーダーシップを発揮する地域といえるでしょう。
参考:環境省|脱炭素ポータル
地域脱炭素を実現するための取り組み
重点対策加速化事業の計画策定状況
地域脱炭素を実現するための具体的な取り組みとしては、以下の8つの重点対策が挙げられます。
- 屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
- 地域共生・地域裨益型再エネの立地
- 公共施設や業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
- 住宅・建築物の省エネ性能等の向上
- ゼロカーボン・ドライブ(再エネ×EV/PHEV/FCV)
- 資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
- コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり
- 食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
2050年カーボンニュートラルの実現に向けての投資関連
脱炭素化に大きく関連するカーボンニュートラル実現のための取り組みついて解説します。
なぜ2050年カーボンニュートラルを目指すのか
先述したように、このまま放置した場合は更なる気温上昇が予測されています。地球温暖化の影響を最小限に抑える現実的な手段として、温室効果ガスの排出と吸収の均衡により、抑制効果を得るためのカーボンニュートラルが必要です。温室効果ガスの排出が減少すれば、地球温暖化の進行が遅れ、気候変動の深刻な影響の軽減が期待できます。
また、カーボンニュートラルな社会では、再生可能エネルギーへの移行や持続可能な生産方法の採用など、地球資源の持続可能な利用が促進されます。このように、地球環境の悪化を防止するためには世界規模での取り組みが必要です。2050年に向けてカーボンニュートラルを目指すことは、国際的な責任を果たす一環として位置付けられています。
長期脱炭素電源オークション
長期脱炭素電源オークションは、電力供給の長期的な安定性と炭素排出の削減を目的として行われる競争入札制度です。通常、政府や電力規制当局が主催し、再生可能エネルギー発電プロジェクトやほかの低炭素エネルギー発電プロジェクトの建設・運用に必要な契約を供給業者に割り当てます。
また電力供給に関する制度としては、容量市場というものもあります。容量市場の目的は、電力供給の安定性を確保することです。需要ピーク時の追加の電力供給を重視しています。一方、長期脱炭素電源オークションは、低炭素エネルギーの導入と炭素排出の削減が主な目的です。
容量市場では、FIT電源以外のすべての電源を対象としています。しかし、長期脱炭素電源オークションでは、再生可能エネルギー発電となる太陽光発電、風力発電、水力発電、低炭素エネルギー源のバイオマス発電や地熱発電など脱炭素に貢献する電源が対象です。
関連記事:容量市場とは? 開始時期や目的、仕組み、容量拠出金について徹底解説。
参考:経済産業省|長期脱炭素電源オークションについて
脱炭素化支援機構
再生可能エネルギーの普及や低炭素技術の開発・導入を促進し、炭素排出を削減するための施策や取り組みを支援する組織です。国と民間からの出資を原資として、ファンド事業を行っています。脱炭素化支援機構の民間株主は82社・102億円にわたっており、オールジャパンで脱炭素に取り組む姿勢を力強く示しています。
脱炭素化支援機構の支援対象は、以下のとおりです。
- 自社の温室効果ガスの排出量の削減や吸収量の増大を行う事業活動
- 他社の温室効果ガスの排出量の削減や吸収量の増大に寄与する事業活動
- これらの事業活動を支援する事業活動
参考:株式会社脱炭素化支援機構|株式会社脱炭素化支援機構(JICN)の御案内
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