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容量市場とは? 開始時期や目的、仕組み、容量拠出金について徹底解説。

将来に向けた電力供給確保の手段として、容量市場が開設されました。容量市場とは、電力の量(kWh)ではなく、将来の電力供給能力(kW)を取引する市場です。海外に続き、日本でも2024年のスタートが予定されている容量市場。

本記事では4年後の将来の電力を取引する仕組みや背景について解説します。法人担当者としては電気代の値上がりにも関係しますので理解しておきたいところです。

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※編集部注:【2024年1月16日更新】

 

容量市場とは

容量市場は、実際に発電された電力量(kWh)を取引する卸電力市場でなく、将来の供給力(kW)を確保する為の市場です。他にも電力量(kWh)、調整力(ΔkW)、環境価値(非化石証書)など様々な価値を個別に取引する市場が設立されています。

将来の国内供給能力を効率的に確保する仕組みであり、発電所の供給能力を価値に変え、さまざまな電気事業者が市場に参加しながら供給能力を確保する手段の一つです。

容量市場の開始時期

容量市場は、2020年に開設されています。海外では、すでに浸透している容量市場。日本でも2024年から導入されました。取引されるのは「4年後の電力の供給力」です。2020年7月、2024年度に供給が可能な状態にできる電源を確保することを目的に、第1回オークションが行われました。

容量市場の導入背景と目的

日本では2016年4月1日以降、電力の全面自由化が導入されました。競争と電気料金の抑制を促進することを目的としたこの取り組みでは、新規事業者の参入により電力の売買が活発化。好ましい効果が得られる一方、再生可能エネルギーの拡大にともない時間帯によっては市場価格が低下し、全電源にとって売電収入が減少する可能性が出てきました。

再生可能エネルギーの発電量は季節や天候によって変動するため、調整には火力発電所による調整が不可欠です。しかし、「市場価格低下により建設が困難になる」「老朽化した施設の補修ができなくなる」といった恐れがあります。

容量市場の導入によって安定供給を確保し、電気事業者の安定した事業運営や電気料金の安定化などの消費者にメリットをもたらすことが目的となります。

「容量市場」の仕組み

容量市場の仕組みでは、まず電力広域的運営推進機関(以降、広域機関)が、4年後の最大需要を試算し、「4年後の電力の供給力」を算定します。また、供給力算定時には気象や災害リスクを考慮して、調達すべき電力の目標容量の設定が行われる仕組みです。この目標容量を満たすために、「4年後に供給可能な電源」をオークション方式で募集し、価格が安い順に落札されます。

発電事業者は、電源を維持できるように必要な管理を行い、広域機関から対価を受け取り、小売電気事業者は将来の供給に必要な電源を確保するために広域機関へ費用を支払います。

「容量市場」の価格はどうやって決まる?

オークションに出された応札価格(円/kW)は、安価な順に並べられ、落札されます。落札された電源のうち最も高い応札価格が「約定価格」です。容量市場の価格は、落札されたすべての電源に、この約定価格が適用される「シングルプライス方式」によって決められます。

 

日本の電力市場の整理電力市場で取引される価値

日本の電力市場では、電気の価値により取引をする市場が異なっており、大きくは以下の4種類に分類されます。

  • 容量市場
  • 卸電力市場
  • 需給調整市場
  • 非化石価値取引市場

上述したように、容量市場は将来において発電できる能力を取り引きします。一方、卸電力市場は実際に発電された電力量(kWh価値)を取り引きします。

また、需給調整市場は短時間で需給調整できる能力(ΔkW価値)についての取引、非化石価値取引市場は、非化石電源で発電された電気に関連する環境価値を取り引きする市場です。
参考:経済産業省「容量市場の見直しに向けた検討状況」

容量市場と卸電力市場の違いは?

容量市場は、将来の電力需要がピーク時に供給できる十分な発電容量(供給力kW)を確保することを目的に設計された市場です。容量市場では、各発電事業者に対して一定の発電容量(供給力kW)を提供することに基づいて報酬が支払われ、需要に対する発電容量(供給力kW)電力供給の信頼性が焦点となります。

卸電力市場は、発電事業者と小売業者が卸電力市場で実際に発電される電力量(kWh)を売買し、価格が決まる仕組みです。

 

容量市場のメリットとデメリット

ここでは、容量市場を導入するメリットとデメリットについて紹介します。

メリット

電力需要は、今後も一層高まると予測されますが、これまでも危機感が持たれる場面が毎年のように起きているのが現状です。「電力を供給できる能力」に焦点を当てることで、老朽化が不安視される施設の保全費用の確保に一定の目途が立てられます。

さらに、容量市場導入は安定性に欠ける再生可能エネルギーの調整力を確保し、将来的な再生可能エネルギーの主力化を促進するのに効果的です。また、小売電気事業者にとっては電力調達がしやすくなり、事業の安定性が向上すると同時に電気料金の変動を抑えることもつながります。

デメリット

2020年に開催された容量市場のオークションにおいては、予想外に高騰した落札価格により業界に混乱をもたらした経緯があります。容量市場による約定価格の結果によっては、再エネ新電力事業者などに与える影響が大きくなり、自由化によって活発化した動きを抑制してしまう要因となりかねません。

大手電力会社と小規模発電事業者の格差が拡大することで、業界内の不平等が生じると、事業者の選択における消費者へのマイナス面が懸念されます。

 

容量市場による影響

容量市場が業界や社会におよぼす影響について説明します。

容量市場の約定価格と小売電気事業者について

2020年9月14日に発表された2024年度受け渡し分の約定価格は、1万4,137円/kWという非常な高値となり、業界に大きな衝撃を与えました。この価格は、広域機関が2024年の需要想定などから設定した需要曲線の上限額であり、世界でも例を見ない高さです。
参考:一般社団法人新エネルギー財団「電力市場の概要(その4)―新たな電力市場(容量市場)―」

容量市場では、国全体で必要な供給力を確保するため、小売電気事業者が発電事業者に対して「容量拠出金」を渡す形となります。約定総額1兆5,987億円を小売電気事業者が市場シェアに従って分担することになるため、事業者によっては数百億円もの負担を強いられる状況です。

これにより、市場での利益は相殺されかねません。日経エネルギーNextビジネス会議が実施した調査によると、「容量市場の自社事業への影響は?」という質問に対して、会合参加者の75%が「事業継続が危ぶまれる」と回答しており、その衝撃の大きさがうかがえます。
参考:日経エネルギーNextビジネス会議「容量市場、衝撃の初回結果を徹底討論」

「現状は維持できる」と見込む企業はわずか4.7%で、約9割の新電力企業は事業への甚大な影響を被ることを予測しているようです。

容量拠出金(容量負担金)とは? 値上げに注意。

容量拠出金の概要 容量拠出金の全体像容量拠出金とは、容量市場において供給力を確保するために小売電気事業者および一般送配電事業者、配電事業者が負担する費用です。発電所の稼働には、多くの人員が必要となり、運転可能な状態を維持するだけでも多くの費用がかかります。また、施設のメンテナンスや設備の増強に加え、老朽化への対応など負担は莫大です。

電気事業法では、小売電気事業者に対して供給電力量の確保だけではなく、中長期的に供給能力を確保する義務が定められています。そのため、容量拠出金の支払いは電気事業を行う企業にとって、避けられないものです。

小売電気事業者は、2024年から約定金額で定められた容量拠出金の支払い義務が発生します。各事業者への負担額は、1kWhあたり3円以上になると見られており、これが電気料金に加算されるため、容量拠出金分の値上げが予測されています。
参考:日経エネルギーNextビジネス会議「容量市場1兆5987億円の衝撃、電気料金値上げ不可避か」
参考:電力広域的運営推進機関「容量拠出金説明会」

 

 

まとめ

容量市場については数多くの課題が指摘されています。それに伴い政府も根本的にあり方を見直す方針を固めています。再エネの導入、省エネ意識からの需要低下、原発の再開など日本の新しい電力需給バランスとなる転換期をむかえています。

そのなかで4年後の発電容量を決めてしまうのは、逆にリスクがあることとも考えられます。今後も公平な制度と国民の十分な理解が必要となり、慎重な検討が必要になります。

また法人需要家様への影響も少なくありません。当社では某電力会社が実際導入する容量拠出金の値上がりを試算しました。年間電気代が約10%値上がりすることが想定されます。

某病院施設 某工場
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契約電力:100kW 契約電力:420kW
負荷率:45% 負荷率:30%
年間電気代:約1,020万円 年間電気代:約2,760万円
容量拠出金反映後年間電気代:約1,120万円 容量拠出金反映後年間電気代:約3,015万円 
年間約9.8%の値上がり 年間約9.2%の値上がり

注釈:建物の画像はサンプルです。

 

エネチェンジBizで最適な電力会社をみつけよう

容量市場の導入は、将来的な電力供給のために必要な措置といえます。

一方で、さまざまな電力市場および電気事業者へ与える影響は非常に大きなものです。電力を供給される側では、容量市場について理解し、事業への影響を最小限にするために、より賢く電力会社を選んでいく必要があります。

エネチェンジでは、簡単に最適な電力会社を選択するための法人向けの電力会社比較サービス「エネチェンジBiz」を提供しています。容量市場の本格始動に備えて、電気代の見直しを図ってみてはいかがでしょうか。

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