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非化石証書とは? その仕組みや種類、取引市場について解説

※編集部注:【2024年9月19日更新】

社会的に脱炭素、SDGsへの取り組みが進む昨今、企業にも環境に配慮したさまざまな活動が求められています。非化石証書はそうした取り組みの中で登場する重要なワードのひとつです。

この記事では、非化石証書について用語の意味や購入によって得られる効果を解説していきます。

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「非化石証書」とは

非化石証書とは

非化石証書とは、再生可能エネルギーなどの非化石電源からつくられた電気が持つ環境価値を証書化したものです。ここでは非化石証書の概要と仕組み、メリットについて解説します。

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そもそも非化石とは

非化石とは、石油・石炭・天然ガスなど、化石燃料以外のエネルギー源のことです。非化石の発電方式で生み出されるのが非化石エネルギーです。例えば、再生可能エネルギーや原子力発電が非化石に含まれます。

有限な化石資源を使用せず、CO2削減効果もあるため、非化石エネルギーは環境保全に役立ちます。特に未来に向けて期待できる非化石エネルギーは、以下の通りです。

  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 地熱発電
  • 水力発電
  • バイオマス発電など

非化石証書制度が導入された背景

2015年のパリ協定以降、世界は地球温暖化抑制のために脱炭素社会に向けて動き始めました。それに伴い脱炭素のニーズが高まり、再生エネルギー比率を上げたい企業が増えています。その手段として2018年より非化石証書制度が導入されました。

導入の背景としては、まずエネルギー供給構造高度化法(高度化法)が挙げられます。高度化法とは、2009年に制定された非化石エネルギーの利用を促す法律で、小売電気事業者に対し2030年までに電力供給の44%以上を非化石電源とすることを義務づけました。しかし、電力調達を市場に頼っている小売電気事業者には高度化法の目標達成は困難です。 そこで非化石証書制度の導入によって非化石エネルギー由来の電気を売買でき、高度化法目標達成に近づくことが可能になります。

また、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)による負担を軽減するという背景もあります。日本では再生可能エネルギーを普及させるために、全ての需要家が再エネ賦課金を負担しています。非化石証書を導入するとその売り上げは再エネ賦課金の原資として活用されるため、需要家の負担を増やさずに再生可能エネルギーの導入を推進できるのです。

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非化石証書の仕組み

非化石証書の仕組み

そもそもなぜ、非化石証書は作られることになったのでしょうか。それは「電気取引市場では、非化石エネルギーで発電した電気だけを選んで、購入することができないから」です。よって電気を売る会社は、発電事業者から購入した電気の中に非化石エネルギー発電の電気が混じっていても、「わが社は非化石エネルギー由来の電気を供給できます」とは言えません。

しかし売電する会社は「非化石エネルギー発電の電気を供給したい」、そして需要家(消費者)側も「非化石エネルギー発電の電気を使いたい」ニーズがあります。そこで非化石エネルギーの「CO2を排出しない」という環境価値に着目。照明をつける、家電を動かすなど、電気としての価値から環境価値のみを取り出して、証書という形で可視化……これが「非化石証書」です。

非化石証書は売買ができます。2018年に非化石証書の取引市場が一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)によって創設され、同年5月から取引が開始されています。売電する会社は非化石証書を購入し、ほかの発電方式の電気と組み合わせて売ることが許可されました。非化石証書と合わせることで、販売する電気が「CO2排出量の少ない再生可能エネルギーの電気」とみなされるようになります。同時に需要家は、非化石証書を活用した電気を購入することで、「実質的に再生エネルギー由来の電気」を使えるようになりました。
出典:資源エネルギー庁|「非化石価値取引について―再エネ価値取引市場を中心に―」(自然エネルギー財団)

 

非化石価値取引市場について

ここでは、非化石証書の取引が行われる非化石価値取引市場について解説します。

非化石価値取引市場とは

非化石価値取引市場とは、再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料以外で発電された電気の「非化石価値」を示す証書を取引するために創設された市場です。

発電事業者と小売電気事業者が電気を売買する場である、会員制の日本卸電力取引所(JEPX)によって開設され、2018年度から取引が開始されています。当初は小売電気事業者向けのみの市場として開設されましたが、需要家の再エネニーズ増加に伴い、2022年度に再編。「再エネ価値取引市場」と「高度化法達成市場」の2つに分類されました。

再エネ価値取引市場での2023年第1回オークション取引量は、前回(2022年度第4回オークション)の約2倍に相当する約85億kWhとなっています。今回のオークションから最低価格が引き上げられたものの(0.3円→0.4円/kWh)、買い入札量は着実に増加しています。また2024年第1回オークション取引量では、前回(2023年度第4回オークション)の約1.7倍に相当する過去最高の約143億kWhとなりました。年々買い入札量が増加していることからも、再エネ価値への関心の高まりが感じられます。
出典:資源エネルギー庁|非化石価値取引について

 

非化石価値取引市場の分類

非化石価値取引市場には、以下の2つの市場があります。

①再エネ価値取引市場

先述したオークションが開催されたのは、この再エネ価値取引市場です。事業者の積極的な再生可能エネルギーへの取り組みを促すことを目的としています。従来は、電気の小売事業者のみが非化石証書を購入することができました。
しかし2021年11月からは、RE100等の再エネ電気への需要家ニーズの高まりに対応するため、需要家が直接非化石証書を購入できるようになりました。取引価格を引き下げることで、グローバルに通用する形で取引できるようになっています。取引対象はFIT電源で、2021年度からは全量がトラッキングされています。

②高度化法義務達成市場

エネルギー供給構造高度化法が定めた、小売電気事業者の非化石電源比率目標の達成を後押しするために創設された市場です。再エネ価値取引市場の開設以前からの考え方を継承するものです。
こちらの市場では、小売電気事業者のみ証書の購入が可能です。取引対象は非FIT電源で、2022年2月よりトラッキングが開始されています。

 

非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットとの違い

電気の環境価値を示すものとして、非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットがあります。ここではこの3つの違いについてご紹介します。

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環境価値の由来

環境価値とひと口に言っても、その種類はさまざまです。非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットはそれぞれ由来している環境価値が異なります。

  • 非化石証書:非化石電源によって発電された電力が持つ環境価値を証書化したもの
  • グリーン電力証書:全て再生可能エネルギーによって発電された電力における環境価値を証書化したもの
  • J-クレジット:温室効果ガスの排出削減や吸収量をクレジットとして国が認証する制度で、植林や省エネへの取り組みなど、再生可能エネルギーによる発電以外でも認証される

環境証書としての取引方法

また証書が取引される方法も異なっています。

  • 非化石証書:日本卸電力取引所(JEPX)におけるオークション形式による市場取引
  • グリーン電力証書:購入を希望する企業や自治体と、一般財団法人日本品質保証機構に認められた発行事業者との相対取引
  • J-クレジット:クレジット保有者との相対取引もしくはオークションによる入札

転売の可否

証書が売却できるかどうかも大きな違いです。

  • 非化石証書:売却不可
  • グリーン電力証書:売却不可
  • J-クレジット:売却可

 

3種類の非化石証書

非化石価値取引市場では、以下の3種類の非化石証書が取引されます。

①FIT非化石証書(再エネ指定)

FIT(固定価格買取制度)とは、再生可能エネルギーの普及を目的とした制度です。再生可能エネルギー発電による電気を、電力会社が一定の価格・一定の期間で買い取ることを国が約束しています。FIT非化石証書は、この制度によって買い取られたFIT電気の非化石価値を証書で示しています。対象となる発電方法は、太陽光や風力、小水力、バイオマス、地熱などです。FIT非化石証書は再エネ価値取引市場で扱われています。

②非FIT非化石証書(再エネ指定)

FIT制度で指定されていない再生可能エネルギーに対し、非化石価値を証書で示しています。主な発電方法は大型水力発電などです。高度化法義務達成市場で扱われています。

③非FIT非化石証書(再エネ指定なし)

FIT制度および再生可能エネルギー以外の発電方法による、電気の非化石価値を証書で示しています。主な発電方法は原子力発電などです。高度化法義務達成市場で扱われています。

 

非化石証書の価格

非化石証書の価格は、日本卸電力取引(JEPX)のサイトで確認することができます。2023年度、2024年度におけるFIT非化石証書、非FIT非化石証書(再エネ指定あり)、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の取引市場データは以下の通りです。

FIT非化石証書(再エネ指定)

FIT非化石証書-1

FIT非化石証書の2023年約定量は約85億kWh前後で安定していましたが、2024年の初回取引では約1.7倍となる約143億kWhに増加しています。

非FIT非化石証書(再エネ指定)

非FIT非化石証書(再エネ指定あり)-2

非FIT非化石証書(再エネ指定あり)の2023年の約定量は第1回取引から第4回取引まで10億kWhに上ることはありませんでしたが、2024年の初回取引では17億kWhを超える結果となりました。

非FIT非化石証書(再エネ指定なし)

非FIT非化石証書(再エネ指定なし)-2

非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の2023年約定量は第1回は約113億kWhと非FIT非化石証書(再エネ指定なし)と大きな差がありました。しかしそれ以降、2024年度第1回に至るまで約定量は低迷し続けています。

 

トラッキング付FIT非化石証書とは

トラッキング付FIT非化石証書-1

トラッキング付FIT非化石証書は、電源の特定や産地と紐付けされた電源種別などの情報が付与された証書です。発電設備に関する属性情報がトラッキング(追跡)された信頼性の高い証書として、以下のような組織や規定への報告・回答に活用できます。

  • 事業運営に使う電気を100%再エネで調達することを目標に掲げるイニシアチブのRE100
  • 英国の慈善団体が管理するNGOのCDP
  • 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
  • パリ協定の⽔準と整合した、5〜10年先を⽬標として企業が設定する温室効果ガス排出削減⽬標(SBT)
  • 地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)

FIT非化石証書の約定量は、トラッキング導入後に大きな伸びを見せており、カーボンニュートラル実現への貢献が感じられます。

トラッキングの見直し

資源エネルギー庁は2023年9月に現在の非FIT非化石証書のトラッキングのあり方を見直す考えを示しました。

現在の非FIT非化石証書では、発電事業者がトラッキングを申請してから付与するまでのプロセスが長く、また約定価格に非化石電源の属性に応じた非化石価値の差異が反映されていないという課題があります。

このため資源エネルギー庁では、「トラッキング付与までのプロセスの簡略化」「非FIT証書での全量トラッキングの実施」「市場での入札方法および約定ルールの改定」などを見直し内容としてあげています。

非FIT証明トラッキング見直しのポイント3つ

 

非化石証書による3つのメリット

非化石証書を導入した際の3つのメリットについてご説明します。

①化石燃料比率の削減

日本ではエネルギー政策の見直しを行い、エネルギー源の分散を進めてきました。しかし2011年の東日本大震災により、原子力発電所が停止するなどの問題が発生したため、化石燃料の依存度が再び増加しました。2021年度における日本の化石燃料への依存度は、83.2パーセントとなっています。
出典:資源エネルギー庁|日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」

一方、世界各国では再生可能エネルギーへの転換策が進行中です。日本には、今まで以上の脱化石化が求められています。温暖化が世界的な課題とされる中、CO2排出量減少に向け、再生可能エネルギーへと軸足を変えていかなければならないのは言うまでもありません。非化石証書を活用することで、化石燃料比率を下げる効果が期待できるでしょう。

②非化石電源比率の達成

エネルギー供給構造高度化法では、小売電気事業者に対し「供給する電気の非化石電源比率を2030年度までに44%以上にすること」を求めています。また、今後より高い非化石電源比率を検討することも発表されています。非化石証書の活用はこの目標の達成に欠かせません。小売電気事業者は、非化石証書を購入することで非化石電源比率を向上することができます。
出典:資源エネルギー庁|高度化法の中間目標について

③「再エネ賦課金」の負担軽減

再生可能エネルギーの普及を阻む要因のひとつが、発電コストの負担です。日本では、この負担を低下させるために「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として需要家の電気代に発電コストを組み込む制度を採用しています。非化石証書の取引が活発化すれば、そこで生じた売上が再エネ賦課金の原資となるため、電気代にかかる負担が軽減されるでしょう。

 

非化石証書の購入方法について

FIT非化石証書の購入方法-1

非化石証書の購入には、需要家自身が再エネ価値取引市場に参加して購入する方法と、代理購入事業者を介して購入する方法の2つがあります。

ここでは、代理購入事業者を介して購入する方法についてご紹介します。

非化石証書提供までの流れ

代理購入事業者を介した場合の、非化石証書が提供されるまでの流れは以下の通りです。

  1. 非化石証書の購入希望者から、代理購入事業者が具体的な使用量や購入量などをヒアリングし見積書を作成
  2. 見積内容に問題がなければ、契約書・申込書の作成
  3. 購入希望者に代わり、代理購入事業者が日本卸電力取引所へ申請、オークションへの入札をし、証書を購入
  4. 非化石証書が交付

【エネチェンジエコ】非化石証書購入代行サービス2022_03_v1.1.pptx1

【エネチェンジエコ】非化石証書購入代行サービス2022_03_v1.1.pptx2

エネチェンジBizで購入するメリット

非化石証書は購入希望者自身が再エネ価値取引市場に参加して購入することもできますが、ENECHANGE株式会社が運営する「エネチェンジBiz」を経由して購入いただく場合、メリットがいくつかあります。

再エネ価値取引市場での会員登録や落札方式・購入方法のシステムは整備がされておらず、購入までの手続きが非常に煩雑です。エネチェンジBizでは代理購入制度ができてから買い付けを行ってきた実績があり、円滑に非化石証書を購入できます。

一般的には、電力会社が市場調達して販売するため、非化石証書の価格が電気代に内包されていたり、1円/kWh以上で販売されていたりしますが、エネチェンジBizでは最低入札価格+αで販売し、1円/kWh未満となっております。割安な価格で購入ができること、明瞭会計なこと、定期購入制度などメリットがあります。

 

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