デマンド監視装置とデマンドコントローラー(以下デマコン)。この2つの機器は共に、企業の電力使用状況(最大需要電力や使用電力量)を常時監視して見える化できる装置だ。
専用端末やPCの画面を通してリアルタイムで電力使用状況を確認できるため、より適切な省エネ対策を検討するために役立つ。
仮にデマンド監視装置がない場合でも、電力会社から毎月届く明細書の数値をグラフ化することで一応の「見える化」はできるかもしれない。
ただ時間別や設備別などより細かい粒度の数値が把握できないため、電気代が増減した原因の特定が難しくなる。また管理対象の施設が多岐にわたる場合は、こうした作業はそもそも現実的でないだろう。
さらに何よりも基本料金の額を左右する30分ごとの平均使用量(kW)を把握するには、デマコンのような監視装置が必要になる。
デマコンによって30分ごとの平均使用量を計測することで、基本料金を左右する最大需要電力(デマンド値)を抑える方法を検討できるのだ。
最大需要電力とは、一か月の中で使われた電力の「最大値」を指す。より具体的にいうと、その月の電力使用量を30分ごとに分けた場合、最も平均使用量の多かった30分間の値(kW)が最大需要電力になるのだ。
そして一か月ごとの最大需要電力のうち、当月を含む直近12カ月で最も高い値が契約電力になる。
たとえば毎月の最大需要電力が以下のように推移した場合、19年1月時点の契約電力は410kWとなる。
この契約電力が上がってしまうと、電気代に占める基本料金が増えることになる。基本料金の値は以下の式によって決まるからだ(ただし契約電力が500kW以上の場合は、最大需要電力をベースにしつつ電力会社との協議で決まる)。
そのため最大需要電力を抑えて契約電力をカットすることが、電気代削減につながるのだ。
最大需要電力を抑える(デマンドコントロール)には、電力使用量が特定の30分間に集中しないように分散させる、もしくはピーク時の電力を抑えることがポイントになる。
デマコンなどによって電力の使用状況を見える化した上で、設備の起動・停止時間を最適化するなど、きめ細かな運用管理が必要だ。
デマンド監視装置があれば、24時間連続してデマンド値を計測できる上に、あらかじめ設定した上限を超えそうになった場合にアラート(警報やメールなど)を送ることができる。
たとえば契約電力が200kWの会社がデマンド監視装置を導入し、目標値を150kWに設定したとする。そうすると消費電力が150kWを超えそうになったタイミングで通知されるという仕組みだ。
このアラートをきっかけに、自分たちで電力を使いすぎているエリアや設備を特定したうえで、不要な機器を一旦停止することで電気の総使用量を抑える、といった工夫をし、デマンド値を下げるよう働きかけることができるようになる。
さらにデマンドコントローラーであれば、事前に設定した機器(照明や空調など)の自動制御が可能になる。たとえば「最大ピーク電力の上限を超えそうになったら、空調Aを自動で消す」といった具合だ。
飲食店など小規模な施設のように、機器の数や種類が限られるケースであれば、デマンド監視装置で十分なケースが多いだろう。その場合、「社内の誰がどの電気機器を止めるか」を決めたうえで、止めてもよい電気機器をあらかじめリストアップする必要がある。
一方で大型の商業施設や工場などになってくると、アラートが出るたびに手動で対応することが難しいケースが多くなるため、デマンドコントローラーによる自動制御が視野に入ってくる。
自動で電気機器を制御できるため、手動の場合と比べ人的リソースが少なく済む点がメリットだ。
ただ当然ながらデマンド監視装置よりも費用が高くなる。またデマコンによる強制制御を繰り返した結果、空調が傷んでしまったなど、設備に与える影響も考慮する必要もあるだろう。
デマコンを導入した場合の費用対効果や現状の設備、データの社内共有方法、メーカーによる活用支援の有無など、総合的に検討することが必要だ。
デマンド監視装置の導入は、メーカーや各地の電気保安協会などに相談するところから始まる。導入費用や想定削減効果などに加えて、現地調査によってそもそもの設置可否を確認することになるだろう。
現地調査の際にチェックされるのが「電力量計」だ。大きな工事などは必要ないことが多いが、設置した旨を電力会社に申請する必要がある。あとは目標値やアラート時の設定などを決めれば完了だ。
デマコンによって把握できる電力データは大きく分けて2つ。最大需要電力と電力使用量だ。
最大需要電力については、前述のようにいかにピークシフトやピークカットによって30分ごとのピークを抑えるかがポイントになる。
一般的に30分ごとのピーク電力を押し上げる要因は、空調であることが多い。その場合、年間でピークに達する可能性がある時期は夏と冬を中心とする一部のタイミングだ。そのタイミングで空調をこまめに調節するといったシンプルな取り組みだけでも、契約電力を下げることに役立つだろう。
時系列などでの電力使用量も見える化できるため、ムダに使用されている箇所を見つけて対策することも容易になる。
デマコンの活用事例については、中部電気保安協会が業種ごとに数多くまとめていて参考になりそうだ。
また電力がいつ・どこで・どれくらい使われているかというデータを元に、社員の労働状況を把握する目的で活用する企業もあるようだ。たとえば就業時間が終わっても照明が必要以上についている拠点を割り出し、残業時間の削減に役立てるといった具合だ。
さらに各拠点の省エネ状況をデマコンによって本社が確認しつつ、電気代削減に成功した拠点を表彰するという風に、社内の省エネ意識を向上させる目的で使われることもある。
企業によるデマコン導入が大きく増えた最初の時期は、2011年に起きた東日本大震災の直後。政府が東京電力と東北電力管内の大口需要家企業に対して、ピーク期間・時間帯の使用最大電力を抑えるよう要請したことがきっかけとなる。
その際に夏場のピークカットを実現する手段として、デマコンの導入が相次いだのだ。実際に「デマンドコントローラー」というキーワードがGoogleで検索されている回数を時系列でみると、2011年6月に急増していることが分かる。
そこから10年近くたったことで、買い替え時期に差し掛かった機器も増えているようだ。従来のように機器を買い取る形ではなく、より安価で手軽に導入しやすいクラウド型のデマコンに買い替える、というパターンも目立つ。
デマコンと一口にいっても、価格帯や支払い方法、機能など多種多様なため、自社の要件を事前に決めた上で、適切な製品を選ぶことが重要だ。
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