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省エネの限界を無料診断で突破、庁舎の電気代を14%削減

2018年度に省エネ診断を受診した理由について、宮崎県の濱山慎也氏(環境森林部環境森林課)はこう振り返る。

「これまでの我慢する省エネではなく、快適な環境と両立した省エネ提案を期待して受診することにしました」。

従来から県庁の省エネを進めるために、定時退庁の推奨や不要な照明を消す部分消灯の推進による電力使用量の削減などを実施してきた。

しかし「こうした運用改善だけでは限界がある」(濱山氏)という課題があったという。

「ちょうどその頃、省エネルギーセンター九州支部の事務局長に来課いただく機会があり、無料診断を紹介してもらいました」(濱山氏)。

診断は無料であることも、受診を後押しした。

県庁の施設がいくつかある中で、まずは県庁7号館から受診することにしたという。

「まずは自分たち(環境森林部)が入っている施設の詳細を診ていただくことが重要と判断しました」(濱山氏)。

宮崎県庁7号館(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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無料診断で提案された施策を実行したことで、エネルギー使用量を14%削減することに成功したという。

「省エネ診断・技術発表会」(一般財団法人省エネルギーセンター主催)にて、宮崎県が発表した内容をレポートする。 

受診対象の庁舎の概要(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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省エネ診断、まずは現地調査から

省エネルギーセンターによる無料診断では、専門家が現地訪問した上で、様々な省エネアドバイスを含む診断報告書を作成してくれる。

「現地調査では、まず午前中に施設の概要や機器の使用頻度、エネルギー使用量、配管図面などを基に、省エネになりそうなネタを探していただきました」と濱山氏は話す。

さらに午後は午前のヒアリングを基に、屋上の空調設備の室外機や機械室にある変圧器など、省エネにつながり得るあらゆる設備をチェックしてもらったという。

「診断員の方と一緒にまわりながらアドバイスをもらえたため、内容を理解したうえで施策を実行することができました」と濱山氏は振り返る。

省エネ診断の概要(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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6つの省エネ提案

その後、省エネルギーセンターからは以下6つの提案が上がってきたという。

無料診断の提案内容(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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その中でもコストをかけずにできる運用改善として、外気導入量の最適化による空調電力の削減に取り組むことにした。

「また正式な提案にはあがっていませんが、換気扇の一種である全熱交換機の適切な利用についてもアドバイスをもらったため、併せて実施することにしました」(濱山氏)。

夏と冬に大幅に上昇する空調の電気使用量。上記2つは、いずれも空調使用量を削減するための取り組みだ。

 

外気導入量の最適化による空調電力の削減

診断当時の7号館は、まだ外気導入量を最適化する余地がある状態だったという。

「たとえば夏に冷房を稼働させる際は執務室の窓を全て閉めていましたが、トイレの窓は開けたままでした。トイレの換気のために良かれと思って窓を開けたままにしていましたが、それが換気の点でも良くないと診断時に指摘されました」(濱山氏)。

仮にトイレの窓が開いたままだと、換気扇がトイレ内だけでなく外の空気も吸い込んでしまうため、結果的にトイレの中の空気を吸いきれず臭いが残ってしまうという。

さらにその残った臭いと窓から入った暑い空気が、トイレのドアから廊下に出ていくため、室内環境も悪化するうえに、空調負荷も増してしまう。

そのため出入り口扉やトイレの窓などをしっかり締め気密性を高めることにした。

啓発ポスターを作成し、冷暖房期間に必要時以外はトイレの窓を開けないようにしたという。

「現在はコロナ防止の観点から定期的な換気は必要ですが、トイレや廊下、更衣室など、無人で換気する必要がない窓まで開けたままになっていないか確認することが大切です」(濱山氏)。

外気導入量の最適化について(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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全熱交換機の適切な利用

一方で、このように冷暖房の使用時に外気の取り入れを最小限にする場合、全熱交換機による機械換気を実施することで、室内の空気を効率的に入れ替えることが重要になる。

全熱交換機は換気扇の一種で、室外から取り入れる空気(給気)と室内から出す空気(排気)の間で熱を交換することで、空調効率を改善できる。

「県庁7号館には受診前にも全熱交換機が設置されていましたが、機械換気の存在を職員が認識していませんでした」(濱山氏)。

自社の施設に設置されている換気扇が全熱交換式かどうかを確認するために、以下2点を確認する必要があるという。2つとも当てはまれば全熱交換機だ。

  • 独立運転・操作できる換気扇はあるか?
  • 換気扇が、通常もしくは熱交換できる省エネタイプか?

 

換気扇が全熱交換機かどうかの識別について(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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「コロナ対策においても機械換気をフル活用することが重要です」と濱山氏は話す。

ただこの全熱交換機能は、年中活用すべきではないと濱山氏は強調する。

春や秋のように快適な温度の時期に熱交換を行うと、「増エネ」になってしまう上に室内の快適性を損なうこともあるからだ。

そうした時期に全熱交換機を使う場合は、熱交換モードから普通交換モードに変えると有効だという。

「外の気温に応じて適切に使い分けることで省エネになると共に、快適に過ごすことが可能になります」(濱山氏)。

全熱交換機の適切な利用について(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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こうした全熱交換機を誰もが操作できるように、現在7号館では簡易操作マニュアルを作成し操作パネルの横に掲示しているという。

さらに夜間や休日で人が不在の場合は、全熱交換機を含む換気扇を停止する運用も併せて行っている。この効果は小さくないという。

7号館の全熱交換機の消費電力は、1フロアあたり約400ワット。これは32ワットの天井照明であれば12灯分に相当する規模だ。

「退庁時に換気扇をオフにしないだけで、12灯の照明をつけっぱなしにしたのと同じになってしまいます。そのため最後に退庁する職員が換気扇を停止させることを心掛けています」(濱山氏)。

 

運用改善の削減効果は?

こうしたコストをかけない一連の省エネ施策の効果はどうだったのか?

濱山氏は、省エネ診断を受診した平成308月前後の電力使用量のグラフを見せた。

令和元年8月の使用量は、受診前の平成29年と比べ大幅に下がっている。さらに暖房の稼働期間である12月以降の使用量も削減できたようだ。

「平成29年と令和元年度を比較すると、電力使用量は14%ほど削減できています」と濱山氏は話す。

7号館の電力使用量の推移(出典:宮崎県のプレゼン資料より)

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今後もさらなる省エネ効果を得るためにも、全熱交換機の適切な利用や窓の開け閉めといった運用を徹底していくという。

「気づいた職員による行動が当たり前になることが重要だと考え、現在も啓発を続けています」(濱山氏)。

 

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