企業による使用電力を再生可能エネルギーに置き換える動きがますます加速している。
CO2排出係数の削減を義務付ける制度への対応や、SDGsの一環としてなど目的は様々。
もはや大手企業だけでなく、中小企業でも再エネ100%を実現するアーリーアダプター層が出現してきている。
ただ大手のグローバル企業であれば、こうした環境施策をアピールする「RE100」のような枠組みがあったが、中小企業向けには長らく存在しなかった。
そこでRE100の中小企業版として2019年10月に発足したのが「再エネ100宣言 RE Action」(アールイーアクション、以下、RE Action)だ。
2050年ごろまでに使用電力の再エネ化100%達成を宣言することなどが参加条件。環境施策に取り組む中小企業のPRや情報交換などを支援していく。
参加企業による取り組みの現状はどうなのか?
RE Actionの運営団体の一つであるグリーン購入ネットワーク(GPN)で会長を務める、東京大学の梅田靖教授(人口物工学研究センター)と、RE Action協議会の金子貴代氏に話を聞いた。
再エネ導入にハードルの高さを感じる中小企業も少なくないが、必ずしもそうではない場合も多いようだ。
GPNで会長を務める、東京大学の梅田靖教授
参加のきっかけ、PR活用や外的要因など
「太陽光設備の設置や再エネ電力プランへの切り替えなどをきっかけに参加される企業も多いです」と金子氏は話す。
せっかく再エネ化に手を付け始めたのだから、アピールできる場が欲しいといったニーズのようだ。
また同業他社による参加が後押しになるなど、外的要因きっかけも少なくないという。
いずれにしても、大企業による脱炭素の取り組みがますます進んでいることで、そのサプライチェーン上の中小企業にとっても自分事にならざるを得ない状況が出来てきているようだ。
「脱炭素化の波が自社にも押し寄せてきそうだと薄々感じる中小企業の方も増えているようです」(金子氏)。
参加のメリット、PRのほか情報収集や交流促進も
主に自社の姿勢や取り組みをアピールする場として参加を検討する企業が多いRE Actionだが、具体的にどのようなメリットがあり得るのか?
サイトで挙げられている主な参加特典は以下の3つだ。
- 再エネ100宣言 RE Actionロゴの利用
- 具体的な再エネ導入情報の収集や参加団体間の交流等を目的としたウェブコンソーシアムへの参加
- RE100参加企業や、GPN、イクレイ日本、JCLPの参加企業等との交流
取り組みのアピールに加えて、関連企業・団体との交流や情報収集の促進などを期待できそうだ。
参加後の反応として、企業からは以下のような声が寄せられているという。
- 「ホームページをみた顧客からの反応は良く、企業への安心感が増したとの声をいただいた」
- 「事業協業の商談依頼が数件ございました」
- 「金融機関から再エネ投資に関して支援する旨の連絡を受けました」
また参加企業などが交流できる場として、「脱炭素コンソーシアム」というプラットフォームも用意されている。
RE ActionだけでなくRE100の参加企業も参加する掲示板で情報交換ができるほか、同じくコンソーシアムに参加している電力事業者や設備事業者から提案を受けられるマッチング機能もあるという。
脱炭素コンソーシアム活用イメージ(出典:脱炭素コンソーシアム資料より)
参加企業による取り組み内容とは?
再エネ化に向けた参加企業の取り組み状況は千差万別。参加前から積極的に施策を進めており、すでに再エネ100%を達成した企業から、目標を定めて走り出したばかりの企業まで様々だ。
取り組み内容は、再エネ電力プランへの切り替えや太陽光発電の自家消費設備の設置、設備・運用改善による省エネなど多岐にわたる。
RE Actionでは、再エネとしてカウントできる取り組みとして以下の5つを挙げている(詳細はRE Actionによる資料を参照)。
- 敷地内・自社発電にて自家消費
- 敷地内・他社発電にて自家消費
- 敷地外・自社他社発電にて自家消費
- 小売からの再エネ電力購入
- 証書等を購入(Jクレジット、グリーン電力証書)
中でも再エネ電力プランへの切り替えについては、事前の投資を必要としない手軽さもあり、比較的実施率は高いようだ。参加企業の多くがすでに切替済みだという。
割高イメージの再エネ電力、実は高くならない場合も
こうした再エネ電力プランは電気代が高いというイメージもあるが、必ずしもそうではない場合も多い。
RE Actionが実施した調査によると、再エネ率が80~100%の高水準の企業でも、20円/kWh以下の低価格で調達しているケースも存在する。
逆に再エネ率が0%(あるいは不明)にもかかわらず30円/kWh以上の単価を支払っている企業もみられる。
企業(58社)による再エネ率(縦軸)と価格(横軸)
こうした企業は、少なくとも今の単価を維持しながら再エネに切り替えられる可能性が高そうだ。
「特にこれまで一度も新電力に切り替えたことがない企業の場合、従来の電気代のままで再エネ100%プランに切り替えることができているケースは多いです」(金子氏)。
また大企業と異なり、中小企業の場合はそもそもの電力使用量が少ないことも、値上がりにつながりづらい要因としてあるようだ。
RE Action発足当初からの参加企業であるエコワークス株式会社(福岡県福岡市)は、2020年5月に全事業所の電力を再エネ由来の電力へ切り替えた。
RE ActionのYouTubeチャンネルに掲載されたインタビュー動画の中で、同社の小山貴史氏(代表取締役社長)は次のように述べている。
「大企業の場合はもともと電気代の単価が安い契約になっている傾向があるため、再エネにすると値上がりしやすいが、我々中小企業はそれぞれの事業所が小さいため再エネに切り替えてもそれほど値上がりしないことに気づきました」。
エコワークスのインタビュー動画
おわりに
「再エネ化は大企業がやるもの」といったイメージを持つ中小企業はまだ少なくないが、再エネ導入に向けてすでに走り出しているアーリーアダプター層は増え始めている。
そうした中小企業の受け皿として、RE Actionもさらに参加数を伸ばしていきそうだ。
環境にコミットする自社の姿勢を外部に打ち出すことで、自社にとって思いがけなかった光景が広がるかもしれない。
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