
複数拠点、それも数十~数百拠点の省エネを数人の本社スタッフで管理する。非常に難しいシチュエーションですが、よくある課題でもあります。
施設ごとのエネルギー使用状況を正確に把握して、それぞれに適切な改善施策を進めることは至難の業です。
「さまざまな企業をまわりましたが、多拠点展開の省エネ管理が完璧だったのは1社だけでした。その企業様は 1 人のご担当者が数百の拠点を管理しきっていましたが、そうしたケースは非常にレアです」。
今回紹介する省エネソリューション「Enneteye®(エネットアイ) 」開発時のユーザー調査で得られた知見について、株式会社エネットの五郎丸 章裕氏(経営企画部 新ビジネス開発室長)はこう語ります。
AI を活用した省エネルギーサービス Enneteyeは、2017年にリリースされました。顧客施設の電力データをスマートメーターを通じて自動的に収集し、AI を活用して解析。問題点の抽出や省エネ方法のレポートの送付などを実施するサービスです。
省エネの専門的知識がなくとも活用できる点や、主要機能を無料で使え、かつ新たな設備投資も必要ないといった手軽さもあり、直近(2019年12月時点)の導入施設数は約1万件に上ります。
拠点数が多くなりがちな低圧施設にも対応した点が、特に好評だといいます。こうしたケースでは、点在する各拠点に設備管理者やエネルギー管理者を置く余裕がないため、Enneteyeによる一括管理へのニーズが特に大きいからです。
さらに省エネ改善のすそ野を広げた点などが評価され、2019年度の省エネ大賞(経済産業大臣賞)を受賞しています。
実際の導入企業による活用状況はどうなのでしょうか?Enneteyeの開発を主導した五郎丸氏に話を聞きました。
株式会社エネットの五郎丸 章裕氏

少人数での多拠点管理、Enneteyeで一括省エネ
省エネを進めるうえで、電力データを利活用できていない企業を主な対象とするEnneteye。施設の規模としては、低圧施設から500kWほどの高圧施設が中心です。
当該施設のスマートメーター情報(30分電気使用量)や近隣の気象情報、各施設の料金・契約情報を元に作成されたレポートのため、個別具体的な内容にできる点が特徴です。

導入企業の中には、2~3人の担当者が数十~数百件の施設を管理しているケースも多く、中には1000件に上る企業もいるといいます。つまり少人数での多拠点管理のため、省エネがまわりきらないという課題を抱えている場合です。
「管理対象の施設数が多すぎるため、Enneteyeを使う前は実質何が起きているか全く分からなかった、という企業様も珍しくありません」(五郎丸氏)。
Enneteyeでは、主に次の2種類の自動レポートを提供しています。
- 長期レポート(無料):四半期ごとなど、中長期スパンでの課題や改善提案などを記載
- 定期レポート(有料):日次や週次など、短期スパンでの課題や改善提案などを記載
Enneteyeによるレポートイメージ

まずは無料(標準サービス)の長期レポートによって、中長期での現状や改善施策を把握したうえで、必要に応じて有料の定期レポートでより細かな数値をみていく、といったイメージです。
いずれにしても現状の電力消費状況や改善提案が自動で生成されるため、レポート作成や共有、施策検討などの工数を大幅に削減できるメリットがあります。
また有料での機能の中には、複数拠点の中から特定の条件にマッチした施設をエクセルで抽出する、といった機能もあります。
たとえば「閉店後の消し忘れが多い店舗」や「出社と同時に全ての設備を稼働させてしまっている店舗」といった課題のある施設を、複数の指標(時間や電力消費量、地域など)を組み合わせて抽出するのです。
指標は1,500以上あるため、柔軟な条件作成が可能だといいます。電力の使われ方を通じて、施設や設備の稼働状況を把握できるため、発想次第で省エネにとどまらない応用も可能です。
たとえば「機器が故障したらいち早く把握したい」「働き方改革の文脈で施設ごとの業務時間を把握したい」といった具合です。
ブラックボックス化した電力消費、自動レポートで重要な課題発見も
「Enneteyeの長期レポートは無料(標準サービス)ということで、はじめは気軽に導入されるケースが多いです。ただ使い続けるうちに重要な課題がみつかり、“事業インパクトが大きいため絶対に対策しよう”となることもあります」(五郎丸氏)。
たとえば過去にこんなケースがありました。
無人の店舗を500拠点ほど保有する企業による事例です。
この企業は、屋外照明が切れてしまった店舗をいち早く把握したい、というニーズを持っていました。屋外照明が切れたまま放置していると、閉店だと勘違いされ機会損失になってしまうからです。
しかしこれが思いのほか困難を極めます。
無人店舗の屋外照明が切れたことにいち早く気づくためには、担当者が自動車で各店舗をまわって確認する方法がありますが、現実的ではありません。
また照明の点灯を自動で把握するようなシステムもありますが、費用的に導入が難しかったそうです。
そうなると照明の点灯有無を唯一検知できる情報はスマートメーターのデータです。
Enneteyeを導入して、各店舗の電力消費状況を把握しようとしました。五郎丸氏らが検討したところ、スマートメーターの情報によって、店舗ごとの点灯状況を95%の確率で把握できる目途がたったといいます。
「無人店舗というシチュエーションは珍しい例ですが、仮にこれが通常の小売店舗やその他の施設だったとしても、適切な現状把握ができていないケースが多数あるという意味では同じだと思います」(五郎丸氏)。
まずはデータによる気づきが重要
これまでの習慣に疑問を持たないまま、従来通りの設備管理が続けられているケースは、思いのほか多いといいます。
「たとえば現場の人は前任の店長に言われた通りに管理をしていて、それが適切どうか疑問を持たれていない、ということはよくあります。現場の長の方による適切でない省エネ運用がエリア全体に広がってしまっていた、というケースもありました。大企業でも例外ではありません」(五郎丸氏)。
まずデータを元に何らかの気づきを得て、「今の運用は本当に適切なのか?」と疑問を持つことが重要だといいます。
「Enneteyeの主要機能は無料(標準サービス)なので、まずはお気軽に使っていただければと思います。もちろんレポートの読み取り方もお伝えします。皆さまが管理されている施設にどんな特徴があって、どういった課題が隠れているかを知るだけでも意味があるのではないでしょうか」(五郎丸氏)。
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