新潟県を拠点として楽器販売などを手がけるあぽろん株式会社。
「ちょっと面白い楽器店」をテーマに、アメリカやイギリス、南アフリカ、セルビアなど、世界中から発掘した楽器を販売。「物語」のある希少な手作りギターをはじめ、独自のラインナップを打ち出しています。
大手のチェーン店や都内大型店では見つかりづらいこだわりの楽器を求めて、県外からも数多くの顧客が来店。誰もが知る有名アーティストたちも数多く店舗に立ち寄るといいます。
業界では知る人ぞ知る楽器店です。
一方でギターやベースなどのメンテナンス事業も積極的に展開。楽器の寿命が延びることで、新品の楽器販売量を抑えてしまう恐れもありますが、「単に販売量を増やすやり方は重視していません」と同社の本間洋一さん(代表取締役社長)は話します。
背景には、大手販売店との差別化を図るマーケティング戦略や従業員のやりがい向上、環境への配慮など、いくつかの要因があるようです。同社なりの「三方良し経営」を重視した結果だといいます。
あぽろん(株)の本間社長
さらにあぽろん(株)は2021年、法人向け電力比較サービス「エネチェンジBiz」を活用。店舗を含む全ての関連施設で使用する電力を環境配慮型のプランに切り替えました。
電力使用によるCO2排出量を「実質ゼロ」にできる代わりに、電気代が上がってしまったものの、ここでも「三方良し経営」の考えで切り替えに踏み切りました。
コスト増にもかかわらず環境配慮型の電力プランへ切り替えた背景とは?本間社長にお話を伺いました。
「2017年に私が社長に就任する前までは、売り上げ目標の達成を最優先にしてきた面もありました」と本間社長は振り返ります。ただ、そのために楽器の販売数量を増やすことに注力するだけの取り組みには、違和感もあったといいます。
「販売数を増やすことは難しくありません。メジャーブランド品を価格競争に持ち込めば売れる数は増やせます」(本間社長)。
しかし本間社長が考える本来の意味での楽器販売業の姿ではないようです。
「販売増を追うやり方は、音楽という文化に関わる楽器を扱う企業として存在意義を感じません。さらには、数の仕事に追われて疲弊する社員を見て、経営の本質とは何かを見つめ直しました。」(本間社長)。
他社と同じような品を扱い、価格競争に追われるレッドオーシャンの中では、大手販売店との差別化が困難になります。数をこなすだけでは、従業員がやりがいを感じることも難しくなってしまいます。実際に一部の社員がやる気を失い離職してしまった時期もあったそうです。
しかし今では「ちょっと面白い楽器店」として、自社が本当に大切だと思える商品を扱う方針に切り替えています。「物語」のある楽器や弾き手の創造性を刺激する楽器など、自社でリスクを取りながら海外で発掘した独自の商品などを扱っているのです。
こうした努力が顧客の共感を呼び、結果として買っていただければ良いという考えだといいます。
あぽろんの店内。個性ある楽器が数多く陳列されている
「物語」のある楽器を世界中から集めたセレクション
出典:あぽろん(株)提供
さらに世界的に気候変動が問題となる中で、楽器に関わる業界の責任も感じるといいます。楽器の生産には木材が多く使われており、環境への影響を無視できないからです。
「つまり、単に楽器の販売数を増やすことは、自社が目指すビジネスの方向性、社員のやりがい、環境への影響など、あらゆる面で正しくないと感じました」と本間社長は振り返ります。
「買い手」と「売り手」、「社会」を意識した「三方良し経営」を再認識したのです。
社会貢献としての環境保護の取り組みも、「簡単にできることからどんどん始めた」(本間社長)といいます。例えば社内PCで使用する検索エンジンは、「Ecosia」というツールに統一。事業収益の8割を植林のために寄付する仕組みである同ブラウザを全社で活用しているのです。
また店舗での電力消費が多い空調や照明も高効率な設備に変更しました。
さらに楽器を海外から輸入する際の輸送手段として、飛行機と比べてCO2排出量の少ない船舶をなるべく使うようにしているといいます。
木材の無駄な消費をなくすための商品提案にも力を入れています。壊れたスケートボードやアルミ缶など、ゴミとして捨てられがちな素材をギターとしてアップサイクルする企業の商品も提案しているのです。環境に配慮した電力プランへの切り替えも、こうした取り組みの一環として実施したのです。
本間社長は、環境に配慮した電力プランへの切り替えを求めて、エネチェンジ Bizに登録しました。
実は今回の登録は2回目。その3年前にもエネチェンジ Bizを通じて電力会社を切り替えていました。当時の主な目的はコスト削減でした。
2017年に社長に就任した後、本間社長はまず全ての経費を精査し、ムダな経費の削減を実行。電気代削減の方法についても調べるうちに、電力会社の切り替えを検討するようになったといいます。
「それまでは地元の大手電力会社との契約を続けることに疑問はありませんでした。しかし電力について色々と情報収集するうちに、新電力に切り替えることで電気代を削減できる可能性があることも分かってきました」(本間社長)。
切り替えについてWebで検索するうちに、エネチェンジ Bizにたどり着いたそうです。
2カ所の店舗(高圧電力)を含む計9拠点での電力プラン切り替えに向けて、エネチェンジ Bizに登録。登録から3カ月ほどで複数の見積もりをエネチェンジBiz経由で取得しました。それぞれの施設にとって最も安い電力プランに切り替えたことで、以下のような電気代削減を実現できました。
年間削減額 | 削減率 | |
店舗施設1 | 約27万円 | 約18% |
店舗施設2 | 約21万円 | 約17% |
その他7施設 | 約25万円 | 約8% |
電力会社というインフラを変更することについて、本間社長はこう振り返ります。
「電力会社を切り替えるのは意外と簡単。エネチェンジBizとのメール連絡だけで完了できました。重要なインフラである電力供給において、新電力という新しいサービスへ切り替えることによるリスクも自分で調べましたが、私なりに問題ないだろうと判断しました。実際に全く問題ありません。」
最初の切り替えから3年後、今度は環境に配慮した電力プランへの切り替えに向けて、エネチェンジ Bizに再登録しました。検討の主な理由は、社会貢献だったといいます。
「社会の一員である企業としての存在意義は何かをずっと考えてきました。単にギターの販売数を増やすだけのビジネスには違和感がある。しかし経済活動をやめるわけにはいかない。バランスを取ることは難しいですが、まずは簡単にできて、しかも効果の大きいことから始めようと思いました。」(本間社長)。
電力プランを変更するだけで環境負荷を減らせるのであれば、やらない理由はないと考えたのです。
電気代増でも切り替えに踏み切った理由
今回あぽろん(株)がエネチェンジBizから取得した見積もりは、「非化石証書」と呼ばれる証書を活用することで、「実質的に環境価値のある電力」を供給する環境配慮型プランです。
環境配慮型プランといっても、CO2排出量を「実質ゼロ」に抑えられるプランから、排出量の一部削減にとどまるプランまで複数あります。本間社長が今回選ばれたのは、CO2排出量を「実質ゼロ」にできるプランでした。
一方でCO2排出量を抑えられる分、通常のプランと比べて電気代削減効果は限られてしまいます。同社の場合、仮に切り替えると電気代が約5%上がる試算でした。
それでも切り替えに踏み切った理由について、本間社長はこう話します。
「三方良し経営を実現するにあたって、利益が出なければ何もできないというのでは、いつまでも変われません。次の世代に貢献できる取り組みであれば、一定程度のコスト増でも実施したいと考えました。コストには投資という側面もあります。どこに支出するかは経営者の理念を表すものでもあります。」
電気代が上がるとはいえ、他の経費項目の調整によって、トータルコストは許容できる水準にできるとの判断もあったといいます。
また環境配慮型の電力プランへの切り替えについて、声高に社外にアピールする必要はないと、本間社長は話します。主に関係者の中で共有しているようです。
「今回の切り替えについて、自社の社員には伝えました。次の世代である働く人達の環境意識も上げられたらとは思います。会社の理念を感じることでロイヤリティに繋がれば幸いです。また経営者の友人たちには経費コントロール面、環境面でも薦めています」(本間社長)。
今後は環境への影響も考慮して、物販以外の事業を強化していく方針だといいます。現在のあぽろん(株)の売上高に占める割合は、物販が6割、ソフト事業(音楽教室や楽器のメンテナンスなど)が4割です。
今後はソフト事業の割合を5割まで高める計画です。楽器購入後の支援をする事業の割合を増やす考えだといいます。
「世界品質でギターやベースをメンテナンスできる”PLEK”という機器を導入しました」(本間社長)。
「科学的診断カウンセリング」も含めた手厚いメンテナンスのため、時間のかかる作業になります。従来主力だった楽器販売の回転率を抑えることにもなりますが、本間社長はこう話します。
「無意味に楽器販売数を増やすことによる環境負荷も考えると、モノを売らずにお客様を支援することで収益を上げるやり方を模索したいです」。
販売したギターを調整しながら長く使い続けてもらうことで、顧客との関係性が深まれば、従業員のやりがいにつながりやすいという側面もあります。さらに将来的には、楽器の「定期健康診断」とセットにした保険としてのメンテナンスサービスを提供することで、収益のストック化も視野に入れているといいます。
社会や環境への貢献施策を着々と進めている同社ですが、「いわゆる“SDGsウォッシュ”のようには絶対にしたくありません」と本間社長は話します。
「SDGsの取り組みを不自然に宣伝したくはありません。それは適切なマーケティングでもないはず。社会の一員として気候変動対策への本質的な貢献、あるいは一定の負担を担うレベルでできることを進めていきます」(本間社長)という考えです。
エネチェンジBizでは、法人の電力会社切り替えを支援しております。ぜひご気軽にご相談ください(利用規約・個人情報の取扱いについて)。
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