受給条件を満たしているにもかかわらず、申請できていない助成金はないだろうか?
「助成金はもうやっている」という企業の中でも、まだまだ申請漏れがあるケースが散見される。
年間で発表される公的支援制度(助成金・補助金)の数は、約3,000種類以上にもなる。
基本的な受給条件を満たしていればほぼ支給されるのが助成金の特長。コスト削減に注力する中小企業であれば、申請漏れがないようぜひ押さえておきたいところだ。
今回は中小企業が使える以下の助成金の概要を紹介する。
人材確保等支援助成金は、企業による人材確保や育成につながる取り組みを助成する制度。全部で7つのコースが用意されているが、本記事では一例として「雇用管理制度助成コース」の概要を紹介する。
同コースでは、事業主が離職率の低下に取り組んだ場合に、最大72万円が助成される。
労働者全員を対象に、以下5つのうち1つ以上を導入・実施することが条件となる。
上記の取り組みによって、離職率を以下の目標値まで下げることが求められる。
目標値は従業員規模によって異なる。
従業員規模 | 離職率の引き下げ目標 |
1~9人 | 15ポイント低下 |
10~29人 | 10ポイント低下 |
30~99人 | 7ポイント低下 |
100~299人 | 5ポイント低下 |
300人以上 | 3ポイント低下 |
ちなみに仮に目標値を達成すると離職率が0%を下回る、もしくは新規創業などのため離職率を算出できない場合は、離職率0%が目標となる。
離脱率低下に向けた計画の実施期間は、3ヵ月以上1年以内とされている。
離職率の目標を達成すると57万円、さらに定められた「生産性要件」を満たした場合は72万円が支給される。
1.雇用管理制度計画を策定(計画開始日の1~6ヵ月前の日の前日までに提出)
2.雇用管理制度の導入・実施
3.離職率の低下目標を達成
4.助成金の支給
定年退職の年齢引き上げや、高齢者の雇用管理制度の整備などに対して助成する制度。全部で3つのコースが用意されているが、本記事では一例として「65歳超継続雇用促進コース」の概要を紹介する。
同コースでは、定年退職の年齢上限の引き上げ、もしくは撤廃などによって受給できる。以下のいずれかに該当する制度を実施する必要がある。
実施した制度や定年年齢の引き上げ幅、60歳以上の被保険者数などによって支給額が異なる。
実施した制度が「65歳以上への定年引上げ」と「定年の定めの廃止」だった場合の支給額は以下となる。
取り組みごとの支給額(出典:厚生労働省の資料を基に作成)
また「希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入」を実施した場合の支給額は以下。
取り組みごとの支給額(出典:厚生労働省の資料を基に作成)
「他社による継続雇用制度の導入」を実施した場合は、以下の額が支給される。
取り組みごとの支給額(出典:厚生労働省の資料を基に作成)
1.支給の申請(定年引上げ等実施後、2ヵ月以内に申請)
2.支給の決定
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換した場合などに、助成する制度。以下の7つのコースがあり、それぞれで要件や支給額などが異なる。
一例として「正社員化コース」と「賃金規定等共通化コース」の概要を記載する。
派遣労働者などの有期雇用労働者を正規雇用労働者等に転換、もしくは直接雇用した場合に助成される。
中小企業向けの支給額は以下の通り。
1.有期から正規に転換:1人あたり57万円(生産性の向上が認められる場合は72万円)
2.有期から無期に転換:1人あたり28.5万円(同36万円)
3.無期から正規に転換:1人あたり28.5万円(同36万円)
1.キャリアアップ計画の作成・提出
2.就業規則や労働協約などで転換制度を規定
3.転換・直接雇用に際し、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施
4.正規雇用等への転換・直接雇用の実施
5.転換・直接雇用後の賃金(6か月分)を支給・支給申請
6.審査・支給決定
すべて、もしくは一部の有期雇用労働者等の基本給を昇給させた場合に、助成する制度。賃金規定等を2%以上増額改定する必要がある。
すべての有期雇用労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定した場合、支給額は以下となる(中小企業の場合)。
一方で一部の有期雇用労働者等の賃金規定等を増額改定(2%以上)した場合、支給額は以下となる。
1.キャリアアップ計画の作成・提出
2.賃金規定等の増額改定の実施
3.増額改定後の賃金に基づき、賃金(6か月分)を支給・支給申請
4.審査・支給決定
両立支援等助成金は、職場と家庭の両立を促進するための取り組みを助成する制度。以下のコースがあり、それぞれで要件や支給額が異なる。
一例として「出生時両立支援コース」と「育児休業等支援コース」の概要を記載する。
男性労働者による育児休業、もしくは育児目的休暇の取得を促進する取り組みを助成する制度。
育児休業の取得促進については、以下のような取り組みが要件として求められる。
そのうえで連続14日(中小企業は連続5日)以上の育児休業を取得(出生後8週間以内に開始)することが必要となる。
また育児目的休暇の取得促進については、育児目的休暇制度の新たな導入や、労働者への周知などが求められる。
休暇は合計8日(中小企業は5日)以上取得する必要がある(出生前6週間から出生後8週間の期間中)。
取り組みごとの支給額(出典:厚生労働省の資料を基に作成)
1.育児休暇、もしくは育児目的休暇促進施策の実施
2.支給申請書等の提出
3.支給決定等の通知
企業による「社員教育」を促進するための助成金。全部で7つのコースが用意されているが、本記事では一例として「教育訓練休暇付与コース」の概要を紹介する。
同コースでは、正社員が外部の教育訓練や各種検定に参加するための新たな有休制度の新設が求められる。
教育訓練休暇が数日間の場合は「教育訓練休暇制度」、数か月(最低でも30日以上)の場合は「長期教育訓練休暇制度」が対象になり、それぞれで支給額や要件が異なる。
取り組みごとの支給額(出典:厚生労働省の資料を基に作成)
1.制度導入・適用計画の作成・提出
2.制度導入・周知
3.制度導入・訓練の実施
4.支給申請書の提出
5.助成金の受給
補助金と比べて手軽に活用しやすい点が、助成金の特長です。
基本的な条件を満たしていればほぼ支給されるほか、補助金のように厳格な審査はなく、受給後の経費報告も不要です(その分、補助金よりも支給額が限られるケースは多いです)。
しかし「助成金はもうやっている」という企業様もいらっしゃるものの、まだまだ申請漏れがあるケースが散見されます。
年間で発表される公的支援制度(助成金・補助金)の数は、約3,000種類にも上ります。
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機会損失にならないよう、助成金のご活用をぜひご検討ください。