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中小企業のSDGs、行政支援を活用したトヨダの事例

作成者: エネチェンジBiz編集部|2021/01/05 3:57:44

有限会社トヨダの豊田取締役

2003年に創業した有限会社トヨダ(熊本県八代市)は産業廃棄物処理業・運送業・建設業・家屋解体事業を展開する企業だ。

省エネだけでなく、CO2排出量削減といった環境施策にも取り組んでいる。 

中小企業の省エネを支援する省エネルギー相談地域プラットフォーム省エネお助け隊を活用した環境への取り組みについて、豊田啓勤取締役が自社の実例を発表した。

「中小企業のための利益を出す省エネ・再エネ導入セミナー」(一般社団法人 熊本環境革新支援センター主催)での講演の内容をレポートする。

 

環境省の「エコアクション21」へ参加

同社は再エネ導入などの環境施策に取り組むにあたり、省エネ支援事業者と地域の専門家が協力して作る省エネ支援の連携体「省エネお助け隊」を活用することにした。

省エネお助け隊の提案によって、まず自社のエネルギー使用に関する現状を把握する取り組みから始めた。

次に行ったのは、「エコアクション21」の取得。エコアクション21とは、事業者が課題改善を自主的に行えるよう、環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステム。二酸化炭素や産業廃棄物の排出量削減施策や、環境に優しい製品やサービスの開発・販売を促すものだ。

エコアクション21取得によって、建設業において経営事項審査での加点が期待できることや、廃棄物関連の入札時に一部資料が免除されるなどのメリットもあるという。

省エネお助け隊の提案を元に、同社ではエコアクション21に対応する活動の一環として、事業による電力使用量や二酸化炭素排出量などを可視化してレポートにまとめている。

同レポートでは年間目標や目標到達度、対応方法などを記載。継続的に実施しているという。エコアクション21は、2年に1度の更新制(中間審査あり)のため、実質毎年の対応が必要となる。

 エコアクション21とは(出典:有限会社トヨダのセミナー資料より)

 

豊田氏によると、取り組みの準備だけで1年近くかかったという。

「情報収集だけでなく、二酸化炭素排出量を計算するのも初めてのこと。その数字が多いか少ないかもわからない状態で進めることになった」と振り返る。

取得から56年が経過した頃、ようやく過去との比較によって取り組みの結果が見えるようになってきた。「このような取り組みをすることで、レポートを作成する当事者は嫌でも問題を意識するようになる」と豊田氏は話す。

例えば事務職には電気代、運転手には運送距離や燃料などを記録してもらうなど、一つひとつのデータの蓄積も従業員に対する啓蒙になっているという。

 

世界的な流れであるSDGsへの取り組み

SDCs(持続可能な開発目標)にも取り組んでいる。

豊田氏は「下請けの場合、SDGsをやっているかどうかを元請けからチェックされる場合もある」と指摘する。

豊田氏によると、大手自動車メーカーが1次~14次下請けの全事業者にまで、SDGsの取り組み有無を確認するケースもあるという。その点を踏まえ、「環境へ配慮することで、選ばれる企業づくりにも繋がるのではないか」と投げかける。

一方で環境への取り組みには当然ながらコストがかかり、短期的に見ると損をしてしまうケースも見られる。

しかし、SDGsが創出する市場は年間12兆ドル、日本円に換算すると約1200兆円といわれており、「中長期的に見れば取り組み自体は損をするものではなくプラスになることが多い。従業員への意識づけが先々の利益確保にもつながると捉えている」と説明する。

有限会社トヨダの場合、SDGs17項目のうち9項目に取り組んでいる。

中でも7番目の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を重視し、再生可能エネルギーによって発電された電力の調達と、自家消費型太陽光発電設備の設置を進めた。

トヨダによるエネルギー関連の取り組み(出典:有限会社トヨダのセミナー資料より)

豊田氏は「再エネプランに変更したが、実は単価は微増にとどまった。プラン選択の際の決め手はCO2排出係数の低さだった」と明かす。

その上で「電力会社が電気を調達する際、どれだけ環境負荷を与えているかを考えた。間接的ではあるが電力を購入する我々も影響を与えることになるので、環境負荷の低い会社を選ぶことにした」と力説する。

カーボンオフセットの視点から、現在もなお電力会社の変更を検討し続けているという。

 

ポテンシャル診断きっかけで設備投資へ

上記の取り組みに加えて、現場での具体的な取り組みのためにポテンシャル診断を受診した。

まず電力使用量の見える化を実施。それまで全体の使用量は把握していたものの、設備毎の使用量は不明であったため、焼却機(2台)や選別機、破砕機、という電気使用量の多い設備の使用量を見える化した。

見える化によって、最も電気を消費している機械や、それぞれの1時間ごとの電気使用量を把握できたという。これらの事業に補助金が出たこともあり、実質的な自己負担は少なかったという。

またポテンシャル診断で受けた提案を実施するために、低炭素機器を導入する設備投資に踏み切った。まず事務所および工場内の電球を水銀灯からLEDに、また事務所の蛍光灯もLEDに変更した。

さらにポテンシャル診断で指摘された部分的照度不足についても、LEDにしたことで改善。現在は十分な照度の中で作業ができているという。

高効率LED照明への変更によって、年間約29kWh(原油換算8L)を削減。年間電気代にして約85万円削減できたという。

次に電気消費量が最大だった焼却炉の電気代削減を目的として、自家消費型太陽光発電設備を導入。年間予想発電量は約59kWh(原油換算15kL)で、年間電気代にして約170万円の削減となった。

LED照明と自家消費によって、合計で年間255万円のコスト減を達成した。

トヨダによる低炭素機器の導入(出典:有限会社トヨダのセミナー資料より)

 

 「やはり設備投資の費用対効果については、導入してみないと分からないのが正直なところ」と豊田氏は語るが、結果的に今回の施策によって毎月の電気使用量や基本料金は継続的に抑えることができているという。

「今回の低炭素機器の導入には補助金を使うことができたことで初期投資も10年以内回収を予想しており、なおかつ職場環境の改善にも繋がるという、みんなが得をする取り組みになった」と豊田氏は感じている。

昨今、SDGsも含めて環境経営の視点を持っていない会社は選ばれなくなっている。

豊田氏は「当然投資へのコストはかかるが、社会の持続可能性へのコミットはこれから必須だ」と強調。さらに「そのような中で『省エネお助け隊』のように行政からの手助けをもらえるのであれば、検討しない手はない。自分が考えていなかったような改善策などの専門的情報を教えてもらえると、取り組みへのハードルも低くなる」と続ける。

最後に、「環境への配慮はとても重要なキーワードなので、当社も優先順位の上位に掲げながら経営を進めていきたい」と将来への展望を見せた。

 

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