近年、エネルギーコストの高騰を受け、工場の電気代削減が喫緊の課題となっています。電気代を抑えることは企業の収益改善にも大きく貢献します。
工場の電気代削減で、企業利益の向上を実現するためにはどのような考え方が必要なのでしょうか。この記事では、今すぐ取り組みを始めるための参考情報をご紹介します。
本章では、工場の電気代に関する基礎知識と一般的な現状について解説します。電気代の内訳を知ることで、より具体的な節電対策へとつなげられます。
工場の電気利用状況は、季節によっても変わります。2023年6月に経済産業省エネルギー庁が公表している「夏季の省エネ節電メニュー」によると、製造業では消費電力のうち、生産設備が80.6%と多くを占めていました。
一方、2022年11月に同省同庁が公表している「冬季の省エネ・節電メニュー」によると、製造業では消費電力のうち生産設備の占める割合は83%となりやや増加しています。そのほかでは、空調や照明などが主な電気使用量の内訳として挙げられます。
参考:経済産業省|事業者向け省エネ関連情報
電気代の削減は、企業利益の向上にも大きな影響を与えます。本章では、工場の電気代削減の必要性について、その理由を更に詳しく説明します。
近年、記録的な円安と燃料価格の高騰により、電気料金は著しい上昇を見せています。2022年度の光熱費は企業の8割で増加となっており、生産設備に多くの電気代を割く製造業では75%以上で光熱費が増加しています。 工場における電気代は、膨大なものとなり、企業経営に深刻な影響を与えています。電気代削減は、単なるコスト削減ではなく、企業の存続に関わる重要課題といえるでしょう。
2023年6月から大手電力10社のうち7社は、国から認可を受けて「規制料金」を値上げしています。審査によって最終的な値上げ幅は、当初よりも抑えられましたが、平均23.22%~平均39.70%の値上げとなっています。
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工場における電気使用量の割合は、生産設備が8割以上を占めています。一度稼働させると稼働終了時まで電源を落とすことができない設備もあるため、なかなかコストを削減しにくいのも工場の設備の特徴です。また消費電力の大きな古い設備をそのまま利用していると、電気代を圧迫する要因となりかねません。工場の設備に関する節電方法は以下の4つです。
1.工場の稼働時間の見直し
工場では夕方までなど稼働時間が決まっている場合も多いでしょう。夜間の時間帯に稼働をシフトさせることができれば、料金の安い夜間電力で稼働することができます。また夏場は昼間はどうしても暑くなり、空調に電気を多く使いますので、夜間または早朝から稼働させると空調の効率も下げずに済みます。
2.デマンドコントロールに取り組む
高圧以上で受電する工場の場合、電気基本料金は過去1年間の最大デマンド値によって決まります。デマンドコントローラー・インバータ・蓄電池といった機器を活用し、最大デマンド値を抑えることで、電気料金を削減できます。
3.最新の省エネ設備に切り替える
コンプレッサやファン、ポンプといった工場の設備でも年々省エネ性能が上がっているため、古い設備のままでは消費電力が大幅に高くなってしまいます。買い換えのタイミングを検討し、省エネ性能の高い設備への切り替えを検討しましょう。
4.太陽光発電を導入する
工場の屋根や駐車場などの空きスペースに太陽光パネルを設置し、自家消費型太陽光発電を導入する方法もあります。発電した電気を工場内の電気設備に供給するため、電気代を節約できます。環境問題への配慮とともに、工場で消費される光熱費を削減する方法として注目されています。
照明機器は、効率的な生産体制を維持するためには欠かせない設備です。しかし使い方を見直すことで、電気代削減に大きく貢献します。照明機器の主な節電方法には、以下の6つが挙げられます。
1.こまめに消灯する
節電の基本中の基本ですが、意識的に取り組まないと日々の業務のなかで忘れやすくなります。使っていない照明を消灯することを常に心がけ、休憩時間や退勤後などは、必ず消灯する習慣づけを行いましょう。
2.LED照明に交換する
LED照明は、従来の蛍光灯や白熱灯に比べて消費電力が約58〜84%削減でき、寿命は約40倍長持ちする点が特長です。初期費用は高くなりますが、交換の手間を軽減しながらランニングコストの大幅な削減が期待できます。
3.照度を調整する
照度が明るすぎると、無駄な電力消費となります。照度調整が可能な機器であれば、必要十分な明るさに調整することで、節電可能です。目の健康にとっても、照度は大切になるため、明るすぎず、その場所にあわせた照度を選びましょう。
4.人感センサーやタイマーを活用する
人感センサーやタイマーを活用すれば、人がいない場所や時間帯の照明を自動的に消灯可能です。人の出入りが多い場所や、定時に退出する部屋などに設置することで節電効果を得られます。
5.省エネ性能の高い照明器具を選ぶ
新たに照明器具を選ぶ際には、省エネ性能の高いものを選ぶようにしましょう。省エネ性能は、照明器具のラベルに記載されています。
6.定期的な清掃を行う
照明器具が汚れていると光の反射効率が低下し、同じ電源でも暗く感じます。定期的な清掃で、節電効果を向上させましょう。
密閉性の高さや安全性への配慮から、通年窓を開けずに空調を使っている工場も少なくありません。空調の節電は、電気代の削減に大きな効果が期待できます。空調機器の主な節電方法は以下の7つです。
1.設定温度を見直す
空調機器の消費電力は、設定温度と外気温の差が大きくなるほど増加します。夏は28度、冬は20度を目安に設定し、こまめな調整を行うことで無駄な電力消費の抑制につなげることができるでしょう。例えば、リモコンのロック機能を使って、設定温度の管理を徹底することも有効策のひとつです。
2.サーキュレーターを活用する
サーキュレーターを活用すれば、工場内の空気を循環させることができるため、冷暖房の効果を高められます。空気の動きにより1カ所に温かい空気や冷たい空気が滞留せず、効率的な冷暖房効果が期待できるでしょう。
3.フィルター掃除をこまめに行う
空調機器のフィルターが汚れると空気の流れが悪くなり、冷暖房の効率が低下します。また、フィルターの目詰まりは機器の稼働に負担をかけるため、電気を余分に消費しかねません。そのため、フィルターは2週間に1回程度掃除し、常に清潔な状態を保ちましょう。
4.日射遮断対策を行う
プレハブなど熱が伝わりやすい素材で作られた工場では、夏場は直射日光を受けて壁などが熱を持ちやすくなり、空調の稼働効率が下がります。その場合、断熱シートや断熱塗料を壁や屋根に施すことで、夏でも工場内は直射日光の影響を受けにくくなります。
5.局所的な冷暖房を併用する
扇風機の設置や局所暖房の導入など、全体的な空調設備と併用し、休憩スペースの快適性を向上する工夫も大切です。工場全体を対象とする空調のみでは、暑すぎたり寒すぎたりするケースも少なくありません。局所的な冷暖房をバランスよく併用することで、工場全体の電気代削減が期待できる場合もあります。
6.ゾーニングによる空調制御
工場内のすべてのエリアを均一な空調設定にするのではなく、利用頻度や時間帯に応じて空調を制御することで、無駄な電力消費を抑えられます。
7.省エネ性能の高い空調機器への更新
古い空調機器は、新しい省エネ性能の高い空調機器に比べて、消費電力が大幅に高くなります。買い換えのタイミングを検討し、省エネ性能の高い空調機器への更新を検討しましょう。空調設備の見直しの際に、上記のゾーニングをあわせて検討するのも効果的です。また、人感センサー付きの機器を導入すれば、稼働人数にあわせて自動的に制御できるため、電気代削減効果が高まります。
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こちらは乳製品製造工場のデータです。年間電力使用の特徴は夏型となります。乳製品を扱う以上、夏の暑さ対策のために空調を多く使用する事が考えられます。使用量削減には使用電力の大きくなる古い型の空調を使用の際は空調リプレイスなどが効果的です。
また、太陽光システム導入の対費用効果の簡易試算なども同時に行えます。電力会社を見直しすることによるコスト削減はもちろん大切です。
こちらの工場では、需要カーブは日中が大きいので太陽光導入をお勧めします。冬の電力使用量が減る時期に自家消費が出来ない場合は、蓄電池なども併用し、蓄電分を夜間などで使用するとさらに冬の電力使用量を減らす効果も見込めます。
重要なことは自社の電力使用状況を把握し効率よく管理することで社会的貢献や持続可能なビジネスを築くことと考えます。簡易分析もお気軽にご相談ください。