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高圧電力に欠かせないキュービクル(高圧受電設備)とは? 役割や耐用年数、保守業務などをわかりやすく紹介!

作成者: エネチェンジBiz編集部|2024/01/23 23:59:27

高圧受変電設備やキュービクルとはどのような設備なのでしょうか。この記事では、高圧電力に欠かせないキュービクルについて、仕組みや耐用年数、費用などさまざまな観点から解説しています。

高圧電力を契約する法人は知っておきたい、キュービクルの基礎知識や必要な届け出、保安管理業務についてまとめました。

高圧受変電設備とは?

高圧受変電設備は、発電所から送られてくる高圧電力を受け取り、その電圧を降圧して施設内で使用できる電圧へ変換するための設備です。高圧受電契約は、契約電力が50kW(キロワット)以上の場合に適用され、主に電力使用量が大きい施設で利用されます。

また高圧受変電設備は通常工場やビルなどの屋上、敷地内などに設置され、その種類は受電室式高圧受電設備とキュービクル式高圧受電設備の2つに分けられます。

1つ目の受電室式高圧受電設備は、大容量の電力を使用する工場などで使われ、基本的に遮断器や継電器などの機器を含んでいます。これらの設備は屋外に設置されることがほとんどです。

この種類は「増設しやすい」というメリットがある一方、機器が露出しているため、「塩害や直射日光などの環境影響を受けやすい」というデメリットがあります。

一方、キュービクル式高圧受電設備は、高圧受電設備を金属製の箱(キュービクル)の中に収納した形式で、これにより機器は保護されます。あとで詳しくご説明しますが、キュービクル式高圧受電設備は「安全性が高い」「コストが削減できる」というメリットがある一方、「収納機器の大きさに制限がある」というデメリットがあります。

高圧受変電設備の構成

高圧受変電設備は、高圧の電気を変圧し、構内の各機器に配電するための機器で構成されています。以下は、一般的な高圧受変電設備の構成と各機器の役割です。

キュービクル 電気制御・配電設備を保護・収容する金属製の箱です。内部には、遮断器やリレーなどの電気機器が配置され、過電流や短絡から設備を保護します。
変圧器(T) 電圧を上げたり下げたりする装置です。コイルと磁気回路を利用して電力を効率的に転送し、電力供給の電圧レベルを調整します。
避雷器(LA) 雷サージや過電圧を吸収・導く装置です。電力設備を過電圧から保護し、安定した電力供給を保障します。
断路器(DS) 電気回路を開閉する装置です。過電流や短絡が発生した際には自動で回路を開き、設備や人の安全を確保します。
高圧気中開閉(PAS) 高電圧の電気回路を開閉する装置です。大気を絶縁体として利用し、安全に電流を制御します。
高圧真空遮断器(VCB) 真空内で電流を開閉する装置です。高い絶縁性と遮断能力を持ち、高電圧回路の保護と制御に使用されます。
過電流継電器(OCR) 電流の異常を感知し、過電流時に断路器を動作させる装置です。電気設備の安全を保障する重要な役割を果たします。
高圧地絡継電器(GR) 高電圧回路での地絡(短絡)を検知し、保護装置を動作させる役割を果たし、電気設備の安全と連続運転を支える装置です。
高圧ケーブル 高電圧を運ぶための電線です。特に厚い絶縁材を持ち、地下や地上で電力を安全かつ効率的に転送します。
低圧開閉器ブレーカー 低電圧回路を保護・制御する装置です。過電流や短絡を検知し、回路を開くことで安全を保障します。
高圧進相用コンデンサー(SC) 高圧進相用コンデンサーは、電力系統の位相角を調整し、電力伝送の効率を向上させ、電力の安定供給に寄与する装置です。
高圧交流負荷開閉器(LBS) 高圧交流負荷開閉器は、高電圧交流回路を開閉する装置です。負荷の切り替えや過電流時の保護など、電力系統の安全と効率を確保します。
高圧カットアウト(PC) 高圧カットアウトは、高電圧回路から過電流を切断する装置です。保護フューズと組み合わせて、電力設備の安全を保障します。
計器用変圧変流器(VCT) 計器用変圧変流器は、高電圧を計測・制御するために電圧・電流を変換する装置で、電力系統の監視と制御に不可欠です。

これらの機器は、需要家構内の電気室などに設置されるか、キュービクルと呼ばれる金属製の箱の中に収納して設置されます。

参考:関東電気保安協会|法人のお客さま向けサービス

 

キュービクルとは?

高圧受変電設備とその構成について詳しく見てきました。ここでは、キュービクルの役割についてご紹介します。

キュービクルの役割

キュービクルは、特に工業施設や大規模な商業施設での電力管理と配電に不可欠です。そのため多くの電気を必要とする工場や大型商業施設、病院、オフィスビル、ホテル、店舗など、さまざまな施設に設置されています。

ビルの屋上や工場の敷地内に「変電設備」と記載された写真のような金属製の箱が置かれているのを見たことがありませんか?これが、キュービクルです。

正式には、「キュービクル式高圧受電設備」といい、6,600ボルトの高圧電力を受電し、キュービクル内で100ボルトや200ボルトに変圧しています。

キュービクルの主な役割は、以下のとおりです。

  • 発電所から送電された高圧の電気を受け取る
  • 施設内で受電する
  • 低圧100Vまたは200Vに変換する
  • 変換した電気を施設内で利用できるようにする

なお、キュービクルは厳密には機器の設置・収納方法の種類のひとつを指し、電気室などで金属のフレームに取り付ける形で設置されるものは「開放型」、金属製の箱の中に必要な機器を一括で収めたものは「閉鎖型」または「キュービクル式」と呼ばれています。

キュービクルは電力供給システムの重要なコンポーネントであり、電気制御や配電設備を保護、収容し、整理する役割を果たします。キュービクルの内部には遮断器、リレー、バスバー、接続端子、制御装置など、さまざまな電気機器とコンポーネントが配置されています。

キュービクル内の機器は、電流の過負荷や短絡、電圧の変動など、電気システムの異常を検出し、適切な保護措置を提供することで、電力供給の安定と電気設備の保護を確保します。

キュービクルは、外部環境の影響から電気機器を保護するための設備でもあります。キュービクルを用いることで塵、水、化学物質、極端な温度など、厳しい環境条件から電気機器を保護することができます。また、キュービクルは、電気ショックや火災のリスクを低減し、作業者の安全を確保する役割も果たします。

キュービクル内の遮断器やリレーは、電気回路の開閉を制御し、異常条件時には回路を切断して電気設備を保護する仕組みです。この仕組みにより、電力供給の連続性が保たれ、ダウンタイムが最小限に抑えられます。また、キュービクル内のバスバーは、電力を適切に分配し、各回路への電力供給を確保します。

 

キュービクルの仕組みは?

発電所で作られた電気は、電力会社の変電所を通して電圧を下げながら私たちのもとへ運ばれてきます。一般家庭や事業所などで低圧電力の電気を契約している場合は、最後に電柱に設置されている柱上変圧器(柱上トランス)で100ボルトと200ボルトに変圧された電気が送られてきます。

他方、工場や大型商業施設、病院などで高圧電力の契約をしている場合は、柱上変圧器の1つ手前となる6,600ボルトの電気をキュービクルで受電し、受電した高圧の電気をキュービクル内で100ボルトや200ボルトに変圧して使用します。

 

キュービクルを設置するメリットと注意点

キュービクルが果たしている役割や仕組みについてご説明してきました。では、実際にキュービクルを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、キュービクル設置のメリットや注意点、高圧受電契約と低圧受電契約の違いについてご説明します。

メリット

キュービクルを設置した場合のメリットは、主に3つです。

  • 安全性の高さ
    キュービクルは高圧受変電設備を金属製の箱の中に収納しているため、充電部などがむき出しになりません。そのため、風雨や直射日光などの影響が少なく、小動物などの侵入も防げるため、感電や停電などのトラブルを防止できます。キュービクルは高圧受変電設備を金属製の箱の中に収納しているため、充電部などがむき出しになりません。そのため、風雨や直射日光などの影響が少なく、小動物などの侵入も防げるため、感電や停電などのトラブルを防止できます。
  • 設置やメンテナンスが容易
    キュービクルは工場で完成させたものを運び、設置場所で組立作業や配線工事を行います。そのため、設置がとても容易で工期も短縮できます。また、さまざまな機器が1つの場所に収められているため、点検やメンテナンスの手間が少なくてすみます。
  • コスト削減
    高圧電力と低圧電力の電気料金単価を比較すると、高圧電力の方が安く設定されています。キュービクル自体は数百万円以上の高価なものですが、設置すると高圧電力の契約が可能になり、電気料金を削減できます。また、キュービクルは小型の箱に機器を収納しているため、屋上や駐車場といった比較的狭い場所でも設置することができます。わざわざスペースや土地を用意する必要がないため、建物や土地にかかるコストの削減にもつながります。

注意点

メリットの大きなキュービクルですが、その一方で注意しておくべき点もあります。まず、収納機器の大きさに制限があります。キュービクルは機器をコンパクトに収納できますが、その一方で大型の変圧器といった機器は収納が難しくなっています。一般的なキュービクルの場合、容量が1,000kVA以上の大型変圧器の収納は困難です。


また、将来的に設備を拡張する可能性がある場合、拡張を見越した設計が必要になります。キュービクル式高圧受変電設備は一度設計すると、設備を拡張する場合に大きなコストと時間がかかります。そのため、機器増設用の開閉器や空き回路、追加キュービクルのためのスペース確保といった増設を見越した設計をしておかなくてはなりません。

高圧受電契約と低圧受電契約の違い

高圧受電契約と低圧受電契約は、電力供給の方法と契約の条件においていくつかの違いがあります。主な違いは、契約電力の量です。

高圧受電契約は、契約電力が50キロワット以上の場合に適用され、主に電力使用量が多い大型商業施設や工場、病院などの施設で利用されます。一方、低圧受電契約は、契約電力が50キロワット未満の場合に適用され、通常は電力使用量が少ない通常は電力使用量が少ない商店や医院、カフェ、美容院などの事業所から一般家庭で利用されます。

高圧受電契約 契約電力が50キロワット以上(目安)
低圧受電契約 契約電力が50キロワット未満(目安)

高圧電力と低圧電力の違い、見分け方については、以下の記事でご説明しています。
関連記事:高圧電力とは?低圧電力との違いも解説

高圧電力契約は、6,600ボルトの電気をそのまま敷地内に引き込むため、キュービクルの設置が必要となります。また、キュービクルは高圧電力を契約する事業者が設置をし、責任を持って管理をしなければなりません。高圧受電では、敷地内に設置したキュービクルで電力を一括管理することも可能です。そのため、電力会社のトランスを通さずに電力を受けることができます。一方、低圧受電ではこのような設備は必要ありません。

また、高圧受電契約では電力供給の単価が低く設定されており、低圧受電契約に比べて電気料金が割安になります。そのため、企業は電力コストを大幅に削減でき、運用コスト全体も低減可能です。さらに高圧受電契約では、電力会社のトランスを使用せずに自社のキュービクルで電力を管理することができるため、電力の損失が少なく、電力の効率的な利用が可能です。

これに対して、低圧受電契約では電力会社のトランスを通して電力を受けるため、トランスの損失が発生し、電力の効率が低下する可能性があります。

つまり高圧受電契約では、低圧受電契約に比べて電気料金の単価が低く、電力の効率的な利用が可能になります。大量の電力を使用する企業や施設にとっては、電力コストを削減できる経済的に有利な選択肢だと言えるでしょう。電力の運用コストを削減できれば、他の重要な事業投資にリソースを再配分することができるのです。

 

キュービクルの値段は?

では、キュービクルを導入する際にかかる費用はどれくらいになるのでしょうか。キュービクルの種類・費用別にご紹介します。

キュービクルの種類

キュービクルは、その大きさによって主に3つの種類に分けられます。

  • 小型キュービクル
    小型キュービクルは、小規模の施設や店舗に設置されます。コンビニなどの店舗では、一般家庭にある家電よりも高い電圧の冷凍・冷蔵設備などを使用するため小型キュービクルが必要になります。発電所から送られる高電圧の電流を、小型キュービクルによって店舗で使用できる電圧まで下げています。小型キュービクルの電力消費量は100kWで、大きさは標準キュービクルの約半分の「高さ170cm〜200cm×幅90〜160cm×奥行100cm」ほどです。1機の電力消費量が100kWのため、200kWの電力を消費する場合には小型キュービクルを2台設置したり、増設キュービクルを使用したりします。小型キュービクル1機あたりの値段は200万円ほどになります。
  • 標準キュービクル
    標準キュービクルは、中規模の工場やスーパーといった電力を多く必要とする施設に設置されます。標準キュービクル1機の大きさは、「高さ240cm×幅160〜320cm×奥行100〜190cm」ほどです。標準キュービクルを設置する施設では、消費電力の量に合わせてキュービクルを増設します。標準キュービクル1機の値段は300〜500万円ほどになります。

  • 大型キュービクル
    大型キュービクルは、大型の工場やショッピングモールなどの商業施設、総合病院といった規模の大きな施設に設置されます。施設の規模によって大きさが変わってくるため、キュービクルを特注する場合がほとんどです。そのためキュービクル本体の値段は施設ごとに変わり、1機500万円ほどから、規模によっては1200万円ほどになる場合もあります。

キュービクル導入の工事費用

実際にキュービクルを導入する場合、工事費用やキュービクル本体の費用、メンテナンス費用がかかります。

  • キュービクルの工事費用
    キュービクルは、本体の大きさが同じであっても、導入する条件や環境によって工事費用が大きく異なります。そのため、実際にいくらかかるかどうかなどの費用を詳しく知りたい場合は、業者に連絡して見積もりを出してもらいましょう。
  • キュービクル本体の費用
    キュービクル本体の相場費用は下記のとおりです。
    ・100kW(小規模施設、コンビニなど):約200万円
    ・200kW(中規模施設、小規模工場など):約350~450万円
    ・300kW(中規模工場、スーパーなど):約550~650万円
    ・500kW(大規模工場、ショッピングモール、総合病院など):約800~1200万円
    以上はあくまで目安となり、キュービクルの規模によって実際の金額が異なります。事業所の使用電力量に合ったキュービクル選びが重要となるため、こちらも業者に見積もりをだしてもらうのがいいでしょう。
  • メンテナンス費用
    キュービクルを設置したあとは定期的なメンテナンスが必要となります。電気主任技術者が毎月もしくは年に1回点検をし、事業者へ報告しなければなりません。メンテナンス費用は業者によって異なりますが、相場費用は月額5〜10万円ほどになります。

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キュービクルの法定耐用年数はどれくらい?

キュービクルを設置した場合、償却資産として申告の対象となります。耐用年数はどんな用途に使用されるかによって異なり、製造に使用される場合は「機械・装置」に分類され、その業種の製造業の耐用年数が適用されます。

また事務所などの場合は「建物附属設備」の「電気設備(照明設備を含む)」「その他のもの」に該当するため、キュービクルの法定耐用年数は15年となります。
参考:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表|減価償却のあらまし

 

キュービクル設置の届け出や保安管理業務について

キュービクルの工事・維持・運用については電気事業法により定められており、設置者が自己責任において保安規程を作成すること、電気主任技術者を選任すること、電気の保安を確保することが義務付けられています。

キュービクルを設置する場合に必要な届け出は?

キュービクルを設置する際は、電気事業法に基づき、国への手続きが必要となります。

  • 保安規程の制定、届出
    キュービクルを設置する際は、設置者が保安規程を定め、産業保安監督部長に届け出る必要があります。
  • 電気主任技術者の選任、届け出

    キュービクルの工事、維持および運用に関する保安監督者となる電気主任技術者を選任し、産業保安監督部長に届け出る必要があります。

    電気主任技術者を雇用することが困難な場合は、保安管理業務を行う個人事業主や電気保安法人(電気保安協会など)に外部委託をすることもできます。その場合、産業保安監督部長に申請し、承認を得る必要があります。

※キュービクルの設置場所が2つ以上の産業保安監督部の管轄区域になる場合、産業保安監督部長ではなく経済産業大臣に対しての届け出や申請が必要になります。

また、保安規定や電気主任技術者、外部委託先を変更する場合も、同じく届け出が必要となります。

キュービクルの保安管理業務は何をするの?

設置者は、キュービクルの保安のために、保安管理業務(巡視、点検および検査)を行わなければなりません。キュービクルの月次点検、年次点検などの頻度は、設置者自ら定めた保安規程に基づき実施します。
保安管理業務を外部委託している場合は、委託先が行います。外部委託先が実施するキュービクルの点検頻度については、経済産業省告示第249号において最低限必要な頻度が定められています。

関連記事:経済産業省|電気設備の申請・届出等の手引き

 

キュービクルの維持管理費が高い!なんとかならないの?

キュービクルの毎月の点検費用などが高い、と悩んでいる人もいるかもしれません。キュービクルの保安管理業務を外部委託している場合は、委託先によって費用が異なるので、変更することも可能です。ただし、保安管理業務の委託先は、費用だけで選んでしまわずに、緊急時の対応なども安心して任せることができる電気保安法人や個人事業主を選ぶことをおすすめします。

また、キュービクルの維持管理費はかかっても電力会社の見直しをすることで電気代の削減ができることがあります。キュービクルの保安管理業務の委託先と合わせて電力会社についても検討してみるとよいでしょう。

 

経費削減を考えるなら、まずは電力会社を見直してみませんか?

キュービクルの価格は決して安いものではなく、更に維持管理費も高いとお悩みの方は多いと思います。そのキュービクルや高圧電力を安くしたいなど経費削減を考えた場合、電力会社の見直しという方法があります。

高圧電力の電気料金プランや単価は電力会社によっても異なるので、設備や事業内容に見合った電力会社のプランを選ぶことで法人の電気代も削減が可能です。

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