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地道な運用改善や低効率設備の見直しが省エネ対策につながる

作成者: エネチェンジBiz編集部|2020/06/10 8:00:44

ばねや自動車用シートなどの製造販売を手掛ける日本発条株式会社(横浜市)が2019年、「ヨコハマ温暖化対策賞」を受賞した。同賞は大幅な温室効果ガス排出量削減など、温暖化対策で顕著な実績をあげた事業者に対して与えられる賞だ。

今回の受賞対象は横浜事業所だが、同社は国内12箇所にある工場でもISO14001を取得するなど、積極的に省エネ対策に取り組んでいる。

今回は20202月に神奈川県、横浜市、川崎市主催で開催された「2019年度事業活動省エネルギー対策セミナー」で、同社の米澤隆氏(技術本部 安全環境部 環境グループ)が「日本発条株式会社の省エネルギー対策について」と題して語った講演の模様をお伝えする。

日本発条の米澤隆氏

 

省エネ対策はどのようにして始まったのか?

同社では地球環境保全への取り組みのため、19935月に「環境ボランタリープラン」を策定。同プラン内で「地球環境行動指針」を定め、「生産工程における省エネルギーと廃棄物削減の推進」「環境保全に対する積極的な活動」を始めた。

同時に、経営会議の下部組織として「地球環境対策委員会」を立ち上げた。

同会には、当時顕在化していた問題に対応するため6つの分科会が設置されており、その中の「省エネルギー分科会」から省エネへの取り組みが始まったという。

地球環境対策委員会は現在、「CO2削減推進会議」と「廃棄物削減推進会議」の二つで構成。省エネを推進する取り組みを行っている「CO2削減推進会議」の主な取り組みとして、米澤氏は以下の3つを挙げる。

1CO2削減表彰(2009年より実施)

グループ会社も含めて顕著な省エネルギー(CO2排出量削減)を実現した工場や関連会社を表彰することで、改善意欲を高め、グループ内でCO2削減施策の横展開を図る。

2.省エネルギー診断(2017年より実施)

取り組み開始直後は顕著な削減が見られたが、近年は劇的な改善を行うのが困難と判断。そこで、診断業者と共に現場でエネルギーデータを測定・解析し、新規CO2削減施策を提案することで、さらなる改善につなげている。

3.太陽光発電の推奨

自然エネルギー由来の電力を使用することで、電力会社からの買電量を削減しCO2排出量を削減する。すでに横浜事業所および国内3工場に設置済み。

 

米澤氏は「CO2削減施策としては、生産設備を変更することも効果的。しかし付帯設備・評価設備の運用改善や高効率設備の検討・更新など、地道かつ低コストで効果が出る改善活動を地道に続けることも重要」と説明する。

その結果、2007年から2018年の間に、CO2売上高原単位の23.9%削減に成功した。

出典:当日発表資料

 

ヨコハマ温暖化対策賞を受賞した取り組み

横浜事業所の温室効果ガス削減目標は、2015年度の基準排出量(23,723トン)と比較し、2018年度に0.5%削減することだった。

既存施設の運用改善や低効率設備の見直しを推進し、結果的には目標を超える0.9%の削減に成功。米澤氏は、特に大きな成果をあげた4例の取り組みについて振り返る。

 

1.工場蒸気ボイラーの見直し(シート生産本部横浜工場)

24時間稼働していた大型ガスボイラーを夜間停止し、夜勤に必要な最小限の蒸気を夜間電力使用の電気ボイラーに置き換え、都市ガス使用量を削減した。

2.塗装乾燥炉への遮熱塗料塗布によるガス量の削減(ばね生産本部横浜工場)

ばね塗装の乾燥に用いる加熱炉に、遮熱塗料を塗布することで熱効率を改善。都市ガス使用量を削減した。

3.工場内使用エア量の削減(コンプレッサー運用見直し)(ばね生産本部横浜工場)

工場内コンプレッサーの運用を見直し、エア圧力を調整。コンプレッサーの更新と台数制御の内容を見直した。エア圧力のばらつき低減により、省エネとエア使用設備作動リスクの低減を両立した。

4.油圧疲労試験機の更新による電力削減(ばね生産本部)

ばね疲労試験に用いていた油圧式試験機を電動サーボ式に置き換えた。前例のない試験機であったが、試作段階で試験機メーカーと意見交換を行うことで安定した稼働が可能となり、油圧維持のエネルギーが不要となったため、大幅な省エネに繋がった。

年率1%削減を続けるために

同社の今後の省エネルギー活動について、米澤氏は「地道な活動の横展開が必要である」と強調する。

具体策として「省エネルギー診断の診断結果や、CO2削減活動の報告事例をまとめた上で分析し、グループ内の各部署に紹介する」「省エネルギー設備ガイドラインにより、優れた省エネ設備を奨励する」といった点を挙げた。

また、再生可能エネルギーのさらなる活用も検討しているという。

今後の導入を見越し、「太陽光発電ガイドラインの策定」「グループ内の太陽光発電事例の取りまとめ」を行い、活用する予定だ。また他の再生可能エネルギー(小水力、地熱など)と共に、BCP(事業継続計画)の観点から災害時の非常時リソースとして活用を検討しているという。

米澤氏は「CO2排出量の年率1%削減を今後も維持するために、活動をさらに活性化していきたい」と意欲を見せた。

既存施設の運用改善と設備の効率化は地道な取り組みだ。しかし、その積み重ねが結果的に大きな省エネ対策につながることに改めて気づかされた講演だった。

 

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