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町工場が製造業務をIoT化、ノウハウの外販も開始

作成者: 飯塚隆志|2019/12/16 4:49:33

1988年創業、従業員16人のデジック(大阪府八尾市)はもともと、ベアリング 関連部品を作る小さな町工場でした。

上野雅弘社長が父から会社を継いだ後は、「もう少し夢のある会社に」とコンピューターのソフトウェア開発とパッキンの小ロット多品種生産という2つの新事業を開始。自社開発のシステムは現場の効率化を促しただけでなく、現場目線を反映したシステムは外部向けの商品にもなりました。

ソフトウェア開発とパッキン製造の事業は今の主要事業となっています。パッキンは、火力発電所や航空機関係 など非常に温度の高いところで使われています。1000度の超高温 にも耐えられるような付加価値の高いパッキンも製作。 金属の板を曲げる機械を動作させる「自動プロ」 も作っています。

当初はこれらの仕事をすべて手書きの台帳で行っていました。注文書が入ってきたら、コピーをして仕事をしていたといいます。その光景は、2001年ごろに変化しました。

デジックの上野社長

まず、受発注だけの管理システムを開発し、取り入れました 。かつては現場がシステムからの指示書に実績を手書きするという時代もあったそうです。2009年になると、事務所と現場事務所、現場とが図面を含めて連携しました。事務管理、工程管理、実績管理の3つがシステムに入り、製造業の見積もりから最後のお金をもらうところまで、全体を管理できるようになったのです。

見積もりについては、各社員が自己判断で行っていましたが、これを標準化。バラバラだった製作工程が自動化・標準化していきました。事務所での受注業務は事務員が入力していましたが、今は注文を受けたもの全員が入力しています。

事務員に余力が出たので、事務員が現場の製品チェックと梱包を担当するようになりました。それまでは作業員の「思いこみ」 による間違った出荷もあったのですが、事務員がかかわることでチェック能力が高まり、出荷ミスもなくなりました。 生産業務も、事務所と現場の情報共有化が実現しています。

システムを使うことで、全工程を一覧表示して詳しく見ることもでき、工程や機械の状況を判断できます。どの工程がどれだけの仕事を抱えているかも、簡単にわかるようになりました。ある工程について今週どれだけ仕事量があるか。こうしたことも一目瞭然で、判断の元になるデータが常にそこにある状況になっています。

以前は計算が大変だった原価の算出も、それぞれの実績が自動的に集計されることで割り出され、利益がどれくらい出ているかまでわかるといいます。詳しく知りたい場合は、関係個所をクリックすれば詳細なデータが出ます。とくに見積価格と実績原価の詳細比較ができるため、実績原価と照らしながら、見積価格の評価も可能になっているといいます。

また、在庫についても以前は現在の在庫しかわかりませんでしたが、いまは現在から先読みしていつの時点でどうなるか把握できます。いつの時点で在庫がなくなるか、今月末にどの在庫がなくなるかもわかるため、生産の手配や発注の手配の判断も簡単にできるようになったといいます。多品種小ロットの工場にとって非常に重要な無駄な在庫を省くことができているのです。

事務所や工場では大型モニターで見られるため、誰がどこでどういう仕事をしているかが確認できます。周りの人の動きがわかるため、自分が次に何をしないといけないかもわかります。「現場が使って楽にならないと使ってもらえない」。上野社長の方針の下、現場の声を聞き、常に現場の人が使いやすいようにシステムを改善しています。

このシステムは小規模製造業向け に特化した受注生産型の生産管理システム「アシストシリーズ」として商品化。「シンプルで使い易い」ことが評価され、導入企業がすでに100社を超えるなど、着実に増えているといいます。

※本記事は、大阪産業創造館主催のイベントを記事化したものです。