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再エネ比率を高める手段は多種多様、まずは目的を明確に

作成者: エネチェンジBiz編集部|2020/03/10 0:58:00

企業活動に必要な電力を再生可能エネルギーでいかに賄うかという点は、すでに多くの企業にとって喫緊の課題になりつつある。

RE100やSBTといった文脈の中で再エネ比率を高めようとする大企業はもちろん、中小企業でもそうした大手顧客企業の要望に応える形で再エネ導入を検討するケースなどが増えている。

自治体でも、公共工事の入札の際に再エネ比率が高い業者をより評価する仕組みを取り入れる機関も出てきているようだ。

「今年に入って潮目が変わってきた。再エネ比率を高めたい大企業や自治体から直接アプローチが来るようになりました」。

こう話すのは、ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社の唐木 力氏(グリーン電力事業部ESG戦略支援担当課長)。

「自然エネルギー100%の電力プラン」を売りにする同社の「グリーナでんき」に関する話だ。

「グリーナでんき」は、再生可能エネルギー(FIT電気を含む)やグリーン電力証書を組み合わせた「再エネ100%電力」として、2015年にリリースされた。

需要家企業には、アウトドアブランドのTHE NORTH FACEやRE100達成を目指すアスクルをはじめ、環境意識の高い企業が名を連ねる。

「とりあえずの再エネ導入ではなく、“RE100基準に沿った調達をしたい”“SBTで認定された目標に対応したい”といった目的が明確な問い合わせも今年に入って増えてきました」(唐木氏)。

確かに自社の再エネ比率を高めると一口にいっても、水準は様々。“とりあえずの再エネ導入”では適切な選択も難しそうだ。

「お問い合わせの際に、いつも弊社から最初に確認させていただくのは、“何を目的とした再エネ導入ですか?”という点です」(唐木氏)。

ネクストエナジーの唐木 力氏

企業の再エネ導入目的、まずは交通整理

再生可能エネルギーの割合を増やす企業の目的は様々だ。

前述のRE100だけでなく、SBT(気温の上昇を産業革命前より2度未満へ抑えることを狙ったイニシアチブ)やCDP(機関投資家が企業に対して温室効果ガスの排出量公表などを求めるプロジェクト)、SDGsなど様々な文脈がある。

「“SBTにはコミットしていないがCDPの評価は上げたい”など、様々なパターンがあります。一方で電気代への影響も気になるはずなので、そこも考慮しながら提案していきます」(唐木氏)。

グリーナでんきには2つの電力プランがある。間口の広いスタンダードプラン(GREENa スタンダード)と、RE100を目指す企業向けの本格的なプラン(GREENa RE100)。どちらを契約してもCO2排出係数をゼロにできる点は共通だ。

スタンダードプランでは、自然エネルギー(FIT電気含む)の比率を抑えたうえで調整後排出係数でゼロを実現することで電気代も安くなりやすいため、ビギナー向けのプランといえるだろう。

一方でGREENa RE100は、自然エネルギー(環境価値のある電源)に加え、グリーン電力証書等も組み合わせることで「100%自然エネルギー」の電力プランとして提供されている。

グリーナでんきのプラン(出典:ネクストエナジーのサイト情報を加工して作成)

 

「スタンダードプランでもすでにSBTとCDPの報告には対応しています。そこからさらにハードルが高いRE100を目指すかどうかは適切に検討する必要があるでしょう」(唐木氏)。

また再エネ比率を上げたいが、いきなり太陽光パネルなどの設備導入や電力会社の切り替えなどに踏み切るのはハードルが高いと感じる企業も少なくない。

「グリーン電力証書を購入すれば、今の電力契約を維持しながら短期的に再エネ比率を上げることも可能です。弊社はグリーン電力証書の販売も手がけているため、手軽に再エネ対応したいビギナー層にも対応できます」(唐木氏)。

 

グリーン電力証書の一例(出典:ネクストエナジーのサイト情報を加工して作成)

 

また提案先が中小企業の場合は、話の進め方も少し変わってくる。

「中小企業は目先の電力コストが安くないと採用できない場合も多いです。そのため電気代重視で提案しつつ、プラスアルファとして環境価値の話をいたします」(唐木氏)。

 

CO2削減効果を数値で可視化

加えて再エネ検討時に気になるのが、従来の石炭火力を中心とした電力プランとの比較方法だ。単純に電気代の数値だけでは比べきれないはずだが、どのように検討すべきだろうか?

「弊社では、CO2排出量を“隠れたコスト”として数値化しています。“グリーナでんき”を契約した場合のCO2排出削減量を見積もり時に提出しているのです」(唐木氏)。

仮にCO2を排出する石炭火力中心の電力プランを契約している場合、CO2の排出権をクレジット購入といった形で穴埋めせざるを得ない局面も出てくる。

たとえばCO2排出権を1トンあたり3000円とした場合、一般的な特別高圧施設の排出量(約3000トン)では年間900万円もの購入費用がかかることになる。

これが“隠れたコスト”というわけだ。

「排出係数をゼロにできる“グリーナでんき”のスタンダードプランであれば、契約するだけでオフセットできます」(唐木氏)。

 

小売だけではない、再エネソリューションとの組み合わせが強み

とはいえ再生可能エネルギーの電力プランを提供する電力会社は他にもある。「グリーナでんき」であることの強みとは何だろうか?

「弊社は電力小売りだけではなく、CO2削減のための自家消費型太陽光発電のトータルサポートも提供しています。CDPの評価やサプライヤーに対する働きかけなども含め、ご相談いただければ何かしらのソリューションをご提案できます」(唐木氏)。

つまり再エネ調達やCO2削減施策をいよいよ本格化していく際のパートナー企業として動けるというわけだ。

「(“グリーナでんき”を契約した)アスクル様にもそういった理由で選んでいただいています」(唐木氏)。

またCO2排出係数が文字通りゼロであることも大きいのではという。

たとえば2月に東京都が「低炭素電力」の認定事業者一覧を発表した。一覧に含まれる電力会社と契約するだけで、各事業者のCO2排出係数に応じてCO2削減相当として認められる試みだ(キャップ&トレード制度の枠組みとして)。

ネクストエナジーもこの12事業者のうちの1社だが、排出係数がゼロの電力会社は同社含め2社のみになる。

「今回この枠組みに選ばれた点は良かった。CO2排出係数ゼロと他の再エネソリューションとの組み合わせを強みとして顧客を開拓していきたい」と唐木氏は話す。

再エネ導入検討のすそ野が広がるにつれ、導入目的や手法はますます多様化していく。まずは自社の現状や目的、要件などを整理した上で、適切なやり方を検討する必要がありそうだ。

 

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